□尚更、寧ろだからこそ
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「柳センパイって、かなり前にあの二人を大輪の花だ・とか大樹だ・とか言ってましたよね」
「あぁ、確かに俺はそう思っているからな。しかしそれが」
「俺は、近くでずっと見れる蓮の花のが良いです」
「!」
「大きい花は綺麗だけど、その代わりに匂いが強いの多いからずっと近くには居れないし、大樹だって近づくと見上げるの大変だし、俺はやっぱり池に浮かんでる蓮の花が良いっス」
「…しかし赤也、知っているか?蓮は泥が無いと咲かないんだぞ」
「だったら尚更!柳先輩そのものっスよ」

戸惑う。
確かに自分の名前には「蓮」が入ってはいるが・と思いながらも、柳は動揺を悟られないように、切原から目線をそらした。
赤也が言うように、柳は自分を蓮だとして考えてみる。
その花は、花と言っても泥を纏わなければ咲かない花だ。泥から咲くといっても過言では無い。真っ白な花だとしても、それは決して美しい花ではない。
つまり、それは。

「ううん。センパイはキレイっスよ」
「あ、かや?」
「なんでセンパイはそんなに自分に自信が無いのかわからないっスけど」
「………」
「今日だってセンパイはこんな遅くまで部室残ってデータ整理してたし、明日皆が気持ちよく使えるように・て毎日皆が帰った後に、当番でも無いのに掃除してくれてんのも知ってます」

真面目な顔をして柳を見つめる赤也には、普段の気軽さは感じられなかった。
いつの間にか立ち止まってしまっている柳の前に、切原は立つ。たとえ目線が交わっていなくとも、彼には関係ない事だった。

「だからセンパイなんスよ。泥だとか言ってますけど、そんな所見せないっスもん。寧ろそれがあってセンパイなんスよ」
「赤也…」
「ってえぇ!? 何で泣くんスか!泣く程イヤなんスか!?」
「いや…すまない。あぁ、違う。ありがとう」
「へ?」

胸がいっぱいになる・とはこういう事か、と柳の脳内はやけに冷静だった。
悲しいわけでも嬉しいわけでも無いのに、勝手に涙が溢れてきたのは初めての経験である。目の前で慌てる切原にみっともない顔を見せたくなくて、柳は片手で眼を覆った。

「…センパイはやっぱりキレイっす」

泣き顔も、何でそんなにキレイなんスか・と切原は頬をかきながらクル・と背を向けた。どうやら照れているらしいが、眼を覆っている柳には見えてはいない。
それでもセンパイが居るからいいや・と切原は柳に背を向けながら微笑んだ。

「センパイ、次から部室の掃除、俺も手伝いますよ!そしたら毎日一緒に帰れますよね!」
「…あぁ、そうだな」
「それから、泣き顔もキレイなんスけど…やっぱり出来れば笑って欲しいっス」
「あぁ、そうだな」
「あ、笑った」

クル・と後ろを振り返ると柳が微笑んでいたので、嬉しそうに切原も笑う。
この二人が、毎日笑顔で下校を共にするようになるまで、あと少し。








「しかし赤也。俺が部室の掃除をしているのを知っていたのならば、声をかけてくれれば良かったものを」
「…だって、それじゃ俺が毎日センパイの帰りを待ってた・てバレるじゃないッスか」
(…今更だな)




−・−あとがき−・−・−・−・−

■毎回終わり方に困る
■赤→柳の片思い話
■蓮二は見えない所で頑張ってるんだよ話
■努力している所は見せない人だよな・な感じで
■私の中の蓮二はネガティブ
■そして鈍感
■自分を見てくれている人がいて安心しちゃうと可愛いな・て思って
■これの赤也視点を書きたい



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