□あなたがいるから
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「仁王くんの事なら大抵は分かりますよ。私は、その…」
「ん?」
「仁王くんの、こ、恋…人ですから」
「柳生…」
「だから隠さないでください」

照れて居るのだろう。普段なら滅多に言わないその言葉と強くなった抱擁に、仁王は思わず柳生を覗き込んだ。

「柳生…」
「はい」
「柳生は、何処にも行かんな」
「ここに仁王くんが居るのですから、当たり前です」
「そか」

そうじゃな・と呟いた仁王の表情は、もう笑顔だった。

「もう大丈夫ですね?」
「おう。迷惑かけてすまんかったの」
「しかし仁王くんでも不安になる事が有るんですね」
「お前さん一体俺を何や思っとん…」
「私を好いてくれてる方だと思っていますが」

違うのですか?と柳生が尋ねると、仁王は笑って「間違っとう」と言った。

「俺は柳生を愛しとる男じゃ」

好き・なんて小さい言葉じゃすぐ溢れてまう。
その言葉と共に接吻を贈れば、柳生は顔を真赤にした。照れ隠しに、ずれてもいない眼鏡を直している。

「…近所にな、親子猫がおったんよ」
「? はい」
「今日親猫がの…死んどったんじゃ」

車に轢かれてな・と、仁王は小さく呟いた。

「置いてけぼりな子猫見たら…不安になったナリ」

小さく鳴き続ける子猫。確かに哀しい。
しかし仁王は特別猫が好きな訳でも、動物が好きな訳でもない。

「つまり貴方は、私達もいつかは・と思ったのですか」
「…プリッ」

図星らしい。
再びギュ・と抱き付いて来た仁王を見て、柳生はそう確信した。

「すみません。私のせいですね」
「なして?」
「私が素直では無いから」

今日なんて一言、自分の考えを伝えただけで仁王は笑顔になったのに。

「やぎゅーのせいじゃなか!」

普段から気持ちを伝えるのは仁王ばかりで、柳生から気持ちを伝えた事は少ない。
柳生の言いたい事が分かった仁王は必死に否定するが、優しい柳生は悲しそうに微笑んだだけだった。
告白したのも、普段声を掛けるのも、仁王からなのは事実である。

「やぎゅーはここに居る・て言うてくれたけん、俺はそれでええ」
「そう…ですか」
「そうじゃ」

だから笑って・と仁王は柳生の髪に触れる。

「なんだか立場が逆転してしまいましたね」

くすぐったそうに微笑む柳生を見て、仁王は安心したらしく、今度は顔中に軽い接吻を贈った。

「柳くんが伝えてくれているはずですし、とりあえず今日は帰りましょう。その場所に私も寄りたいです」
「そか」
「花を贈って、お祈りを」
「そうじゃな」

言われてやっと体を離した2人は鞄を持ち立ち上がった。
学校から仁王の自宅まで花屋は無いから、どこかで摘んで行く事になるだろう。それを言うと仁王は「大事なんは気持ちじゃ」と言って笑った。

花を贈って
お祈りを。





「…明日、真田に怒られるんやろうな」
「…その時は私も一緒に罰を受けますから」





―あとがき―・―・―


なっが…

普段気持ちを言わない柳生に不安になるも結局はラブラブな28。
やっぱり2→→→←8が理想。
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