□背中にも目があれば良いのに
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幸村部長の笑顔は優しい。
副部長の笑顔も優しかった。
丸井先輩の笑顔は明るい。
仁王先輩の笑顔は胡散臭い。
あ、柳生先輩の笑顔も優しい。
ジャンカル先輩の笑顔は安心する。

柳先輩の笑顔は




■背中にも目があれば良いのに




「先輩笑ってくださいよ〜」
「…は?」
「俺、先輩の笑顔って見たこと無いっス」
「………」
部活帰り、二人で帰るのはもう珍しくなくなったが、学校から今までずっと黙り込んでいるのは珍しいな・と思ったら・といわんばかりに柳はため息をついた。
赤也は確かに集中力があるが、一つの物事にしか集中できないのが欠点だ。
「柳生先輩と話している時とかの柳さんの笑顔は見たことあるんですけど」
部長と柳生先輩の笑顔は優しいんスよ。丸井先輩のは見てるこっちまで元気になるし。まぁ仁王先輩の笑顔ほど信用できない物も中々無いんスけど。あ、この前副部長の笑顔見たんスよ!ビックリしましたよ!
「で、俺、考えたら柳さんの笑顔見たことないな・て思って」
「それで今笑え・とお前は言うのか」
「やっぱ無理っすかねぇ」
「無理だな」
何に笑えば良いのだ・と柳は眉をひそめる。
確かに柳は感情を面にこそ出さないが、行動などの態度で感情を示してくる。怒っている時は荒っぽく、悲しいときは動作が遅い。逆に機嫌が良いときの行動は手際が良い。
そんな所も可愛いのだ・と素直に切原が言えば、きっと柳は歩調を速めるだろう。
普段から柳は感情が表情に出ないので、彼の満面の笑みを見たことがある人物が部内に居るかも怪しい。
「ほら、さっさと帰るぞ。暖かくなってきたが油断をすると風邪を引く」
「…そうしたら柳さんが看病してくれるんでしょ」
「コラ、甘えるな」
ペシ・と頭をはたかれた。痛くは無いけれど、とりあえず「痛いっスよ〜」と言っておく。
「も〜、あ、柳さん!コンビニ寄って良いっスか?」
「買い食いは感心できないな」
「まぁ良いじゃないですか!」
先に入ってますよ・と元気に赤也は店内へと入って行く。どうやら「笑顔」云々の話は食欲の前に消えたらしい。
(…赤也と一緒に居る様になってから、よく笑うようになったと思ってるんだが)
そう行って元気に店内へ入って行った背中に笑みを向ける。
(あぁ、ほら。また笑ってしまった)
面白くないのによく笑えるものだな・と自分自身に感心したところで。
(いや、違う。楽しいから笑うのか)
これは新しいデータが増えた・と柳は赤也の後を追って店内に足を踏み入れた。





―あとがき―・―・―

赤也がその笑顔を見た事は無いのは、自分の背中に向けられているからです。
満面の笑みの柳。超見たい。




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