□口実
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空気が冷たい。そう感じて、柳生は思わず首をマフラーに埋めた。




■口実




「なん?やぎゅー、寒いんか?」
思わず「寒い」と呟いたのが聞こえたのだろう。柳生の隣りの彼が顔を覗いて呟いた。
「…あなたは寒くないんですか?」
「いんや寒いけど、地元の方がもっと寒いけんまだ大丈夫じゃ」
「そうなんですか」
天気予報では確かに冷える・と言っていたと言うのに、なぜ今日は手袋をしてこなかったのだろう・と柳生は後悔した。
「………」
「? 仁王くん、私の顔に何か付いてますか?」
「鼻と頬が赤いぜよ」
「だって寒いですから」
「…可愛いなぁ・て思って」
「は?」
そう言いながら、指先もこんなに冷とうなって・と、仁王は柳生の手を握る。
「に、仁王くんっ」
「なんじゃ?」
「手を、は、離したまえ」
完全に日が落ちたとはいえ、人工的な光で世の中はまだまだ昼の様だというのに。
「嫌。こうした方が暖かいんじゃ」
だから離さん・と優しい笑みを浮かべる仁王の手の力は、言葉通りに益々強くなる。
「ほら、暖かくなってきた」
「………」
「…なぁ、柳生」
「はい?」




もっと、暖めてもえぇ?









―あとがき―・―・―・―

ありがちネタ&季節無視ネタ(…)
私の中で仁王は広島出身なんですが、皆様はどうなんだろう。

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