□だから大丈夫
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朝から体調が優れない事には気付いていた。季節の変わり目で寒暖の差が厳しかったのが原因だろう。
軽く咳が出ていたくらいだったから、気にせず朝練に出たのが間違いだった様で、発熱している可能性98%になってしまった。
顔色が悪いぞ・大丈夫か・と比較的仲の良いクラスメイトが何人か声を掛けてくれるが、それでも休む気など全く無かった俺はあっさりと嘘を告げると机上の作業を再開した。次は確か英語の授業だ。
「蓮二」
聞き慣れた声に思わず顔を上げる。
「弦一郎か。どうした?」
「全く、どうしたこうしたももない。行くぞ」
「おいっ」
手を掴まれ引っ張られる。ガタ・と椅子が派手に鳴ったが、誰も弦一郎を止めるつもりは無いらしい。
それどころかちゃんと先生には言っておくから・と見送られてしまった。
「全く、またお前は無茶をする」
…どうやら弦一郎が俺の不調に気付いていた確率100%。
まだ無茶をしている様なら・と様子を見に来たら案の定・という事らしい。
「無理せず朝練を休めば良かったものを」
「しかし大会が近いのに休む訳には…皆の練習メニューも必要だし、それを作るためには皆の様子を知らないといけないし」
「…お前は人の事ばかり」
蓮二らしいがな・と呆れた様に溜め息を吐かれた。
「しかし…何故わかったんだ?」
朝は自分自身そんなに辛くなかったのだが・と言えば。
「…そうだな。お前は他人ばかりを気にするから」




「だから俺はずっとお前自身を見ているんだ」




その台詞と笑顔に熱が上がった気がした。





―あとがき―・―・―・―

参謀は絶対に他人優先な人だよな・という妄想から。
 

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