†Serial novel†
□始まりから続く道.
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「え,任務…?」
「そうだ.」
暁に入ってそんな時間も経たない私に,いきなり任務…?
私は驚いて思わず聞き返してしまう.
「い…一体どんな任務ですか…?」
びくびくしながら聞くと,相手がこちらを見てきたので息が詰まる.
こ……怖い….
「ほら旦那ァ,緋粋が怖がってんだろ…うん.」
「デイダラ…さん….」
「デイダラで良いって言ったろ…うん.」
其処へ透かさずデイダラさ…デイダラが助け船を出してくれた.
そして私をサソリさんから隠すように引き寄せると,私の頭をぽんぽんと撫でる.
「怖いのは本体じゃなくてヒルコだろ….」
サソリさんは更に低い声でデイダラを睨むと,意味不明な発言をした.
え…本体?ヒルコ?…ヒルコさん,て誰?女の子?
漢字変換予想→蛭子.
…何か怖っ.
あ,イントネーションは某アメフト漫画のヒル●さんと同じです.
「旦那が緋粋の事睨むからだろ,うん.」
「あ?」
段々喧嘩腰になってきた2人に私は慌てる.
お願いだから暴れないで下さい.
巻き込まれたらきっと私死ぬ….
「…チッ.」
サソリさんに舌打ちされた.
それは私に向けてなのかは分からないけど…舌打ちされれば良い気分にはならない.
少し俯き加減で居ると,行き成り変な音がし始め….
「っ!?」
ガチャッ,ガキョッ,等と変な音に私は思わず首を竦める.
幸いにもデイダラが壁になってくれているから,見えはしない.
けれど….
今まで聞いた事の無い様な不気味な音に鳥肌が立つ.
な…何が起きて居るの…?
「…これでどうだ….」
「……ふん.」
「…っ?」
聞いた事の無い声に,不機嫌そうなデイダラの声.
え…まって,ホントに誰このイケメソ声.
好奇心から,顔を出してそっとそちらの様子を見てみる.
と,先程まで居たはずのサソリさんの姿は無く,替わりに赤茶色の髪に茶色い瞳のえらい美青年が其処に居た.
「……どなた,デスカ?」
「…クククッ.」
私の問い掛けに笑ったのはその美青年.
か……かっこいい….
思わず顔を赤らめると,デイダラが更に不機嫌そうな顔をしてボソリと教えてくれた.
「…旦那.」
「え…?」
「其処に居るのがサソリの旦那の本体だよ…うん.」
「……え?」
私は数秒間思考停止した後,一度デイダラの背中に回って顔を埋めると呼吸を整える.
やばいよ…心臓バクバクして….
これが,見初める…って事なのかなぁ?
……いやいやいや…,抑本体とかって何ですか.蛭子さんは何処ですか.
……あ,もしかしてもしかすると,サソリさん本体の下に転がってる(?)のが蛭子さんですか.
…あー!とか思ってても顔が熱いのが治らないっ!
ど…どうしよう.
するとデイダラが私を引っ剥がして前に押し出す.
な…ななな何するのよデイダラ!?
「一応旦那本体とは初対面なんだし,もっかい自己紹介しとけ…うん.」
デイダラの言葉に少し戸惑うが,慌てて頭を下げ自己紹介をする.
「あ…は,初めまして!神風緋粋ですっ!」
「赤砂のサソリ….こっちがヒルコだ.」
"初めまして."の言葉にサソリは苦笑していたが,今更恥ずかしいなんて思っている場合じゃない.
やっぱり蛭子…じゃなくてヒルコは足元の方だったんだ.
イントネーションも覚えたし,ヒルコが実はカラクリだという事もサソリさんの説明で分かった.
サソリさんが天才傀儡師だって事も.
…天才.
「緋粋…,言っとくが旦那はオイラより歳食ってるぜ…うん.」
「…へ?」
唐突なデイダラの言葉に思わず変な声を出してしまう.
チラリとサソリさんを見てみるが……どうみてもデイダラと同い年位の青年にしか見えない.
「2,3歳位の違いでしょ…?」
苦笑しながら言ってみるが,デイダラの顔は真剣で内心かなり驚いた.
…ふぃーん,マジなんだ…?
「大丈夫,年上は好みだよっ.」
わざとらしく感じない様に明るく言って笑顔を作ると,私はデイダラにそれ以上の言葉を拒む様に首を軽く振った.
サソリさんの目が早く下らない話を終わらせろと催促しているから.
確かに今はそんな事話している場合ではなかった.
任務の事をきちんとサソリさんに聞かなければ.
「で…,さっきの話の続きなんですけど….」
「ああ,実はリーダーから突然の任務何だが….
何でも,雪隠れの里出身の抜け忍が此処最近,裏で任務を行う為に街に出没するという噂を角都の部下の帳簿係が聞いたらしくてな.
しかもそいつは大名の娘で,名前は白菊椿.
リーダーは,そいつのスカウトに行ってくる事を任務として俺に言ってきた.」
私は口を噤んだ.
そんな大それた任務に,何故私も行くのか…?
忍同士なのだから,戦う事になっても可笑しくはない.
「何かあったら護ってやるから,心配するな…うん.」
本来戦闘タイプでは無い事をあの最初の戦いの後の様子を見て理解してくれたらしく,デイダラは私の気持ちを読み取ったかの様に言った.
でも,甘えては要られない.
体力が無くとも,私にはナイフが有るから.
「仕度が出来次第,出発するぞ.」
サソリさんの言葉に,私達は各自自室に戻って必要な物を揃える事にした.
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