†Serial novel†

□序章:緋粋
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11月8日….


私は木ノ葉の里,神風一族の長の娘として産まれた.


名前は"神風 緋粋(かみかぜ ひすい)".


私のチャクラには,練ると自身のみならず,他人の傷までもを立ち所に治せるという不思議な性質があった.


回復力があるわけでは…ない.


活性化.


エネルギーの凝縮されたチャクラが細胞等を活性化させ,傷の治りを早めているのだ.


傷だけではない.


疲れている人にチャクラを流し込めば,流し込んだ分だけ元気になる.


"何故だ.何故こんな子が又生まれて…."

"神風の名に相応しくない奴等は要らんな."


最初は皆に文句ばかり言われた.


何故.


…昔から私の一族は,戦いの中で神風と成るべく"特攻隊"の役割を受け持っていた.


なのに私は術を使えない.


だから,何も出来ないと思ったのだろう.


"術が使えないとはな…."


"神風一族の恥だ."


私達への返事一つ一つは…そつなかった.


とても…悲しかった.


何とかして認めて貰わなくてはいけない.


その一心で,武器の扱いでは誰にも負けないよう沢山の練習をした.
武器の中でもナイフ等の刃物を中心に練習する事によって,その扱い方はかなり長けた.


でも,それだけでは認めて貰えない.


私は更なる向上の為に,毎日体術を磨いた.


そうする事によって,武器を扱う時,次への動作を速く,且つ滑らかに行う事が出来るのだ.


だから私はまず,無駄のない動きを長時間継続して行える為に体力を付けた.


更に武器と同時に行える足技を磨く為に,俊敏さや柔軟さを身に付けた.


そして戦闘に於いて様々な試行錯誤を重ねた結果,私は身体の至る所に武器を仕込む事に決めた.


武器を巻物から召喚する時間でさえ,戦闘の中では命取りになるからだ.


こうして独自の戦闘スタイルを完成させた私は神風一族の名に恥じぬ娘となり,マンセル内でも攻撃の核となって動く事が出来た.










…辛かった.


こんなの,私が望んでいる強さじゃない.

幾ら一族の名に恥じぬ娘となっても,失う痛みは心に深い傷を作り,消える事も治す事も出来無いのだ.


私の内側[精神]は脆い.


外側ばかりを固めていった結果だ.


そして,そんな弱さを庇ってくれる人も,もう居ない.


偏った強さや力は身を滅ぼし,他人を傷付けるだけだった.





私はマンセルを抜け,親に毎日朝から晩まで扱かれる事となった.


精神を鍛える為に.


しかし,それは逆効果で,身も心もボロボロにするだけであった.




















…私には,大好きな事がある.


植物を育てる事だ.


チャクラ系統が水と土の私は,種にチャクラを練り,私のチャクラが練り込まれた土にその種を埋めて水をやるのだ.
後は太陽の光があれば,皆すくすくと育っていく.


だから窓の大きな私の部屋にはいつも,様々な花や薬の材料と成る薬草等が生い茂っていた.


そんな私の日課は,その子達の"お話"に耳を傾けたり,一緒にお話して歌う事だ.


皆それぞれが色々な事を話していて,心地良い言の葉にとても心が安らいだ.


他にする事の無い日は,ずっとそうしている事が多くなった.


…友達が居なかったから.


皆…何故か私を避ける.


そしていつもチラチラとこちらを見て,ヒソヒソと何か囁きあっていた.


友達は居なかったけど,別に淋しくはなかった.


空を見上げれば小鳥が唄を謡っているし,大きな木が私に語り掛けてくれる.


そして歌を歌えば元気になるし,何よりも私には帰る場所があったから.


それで,充分幸せだった.


なのに….



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