短編

□的確な愛情論
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雑誌を広げて一人寂しく黙々と弁当を食べる珠美は、それはもう集中していますと背中に注意書きをしているくらい集中し、もちろんオレの存在に気づいてはいなかった。


ち、つまんねえ。

でも、楽しませてもらうぜ。


国語科教員に割り当てられた教室には他にも誰もいなかったから、驚かせてやろうと背後に忍び寄ると、珠美が広げている雑誌には今流行のあの言葉のキャッチがでかでかと掲載されていた。


「へえ…、なになに?」


『婚活のススメ!〜20代女性のための賢い人生選択〜』


「きゃああっ!?」


どぎついピンク色、ぶっといゴシック体のキャッチを丁寧に読み上げてやれば、案の定珠美は椅子からずり落ちそうなほど、面白いくらい驚いた。
こいつはいつも素で笑えるような反応を示す。オレはそこらのリアクション芸人よりよっぽど愉快だ。


…ちなみに、この時自身の鼓膜がビリビリとキたのは言うまでも無い。


「葵理事!びっくりさせないでください!心臓止まるかもしれなかったんですよ、一瞬」


珠美は驚いた勢いでパンパラとデスク上に転がった箸をまた整えて、少し涙目で抗議する。
逆にこっちの心臓が止まりそうなほどの悲鳴を上げられちゃ、説得力も無いもんだが。


「悪い悪い。心臓止まったらマッサージしてやるから許せよ、せんせ」

「結構ですっ!ちょ、手の位置おかしいですよ」

「いてて」


手を珠美の胸に持っていこうとすると、当たり前手をに抓られて終わりなのはご愛嬌。


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