連載
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早めに出発したのが功を奏して、学校へは大分余裕を持って到着した。
オレは一直線に理事長室へと向かい、まずジャケットを適当に放り投げる。そして只でさえ締まりきっていないネクタイをさらに緩めて、シャツの第二ボタンまで外す。
革張りのソファに身体を預けると、一日分の疲れがもう表れてしまったような疲労感に襲われた。
今日一日を生きることが、疲れる。
窓から差し込む太陽の光が、まだ朝だって言うのに眩しい。
オレを責めている様に、攻撃的で爽やかな太陽の光が。
眩しくて目を閉じてみても、瞼を越えてその光はオレに届く。
瞼越しのそれは、一面血の色をしていた。
シャワーを浴びた後、新しいシャツを用意しておいて良かった。
まだ袖も通してなかったシャツは着心地が良い。口紅の後がまだついたこともなかった、純白の衣。
確かオレにも、そんな時期があったはずなのに。
これもそのうち、香水やら、化粧品やらに汚染されていくのだろうけど。
こんな憂鬱を背負っている時くらいは、敢えて罪を自分から貪るようなことはしたくない。
「純白」のシャツは、申し訳程度にもオレを慰めてくれるのだろうか。
目を開ければ、少し煙草のヤニでくすんでしまった天井。
ソファに寝転んで、本来なら見慣れるべきではない理事長室の天井を眺めながら、意識はゆるやかな下り坂を転がるように遠のいていった。
第2話
煙が目にしみる
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