宝物

□一緒にいれば、
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麗らかな午後の日差しが優しいある日。
仕事もなくゆっくりとソファーに寝そべっていたスクアーロは、ちゃぶ台返しの如くソファーを裏返され、床に顔から叩き付けられたすぐ後に身体全体にソファーが乗っかってきた。
ぐぇっ。と蛙の潰れたような音が聞こえるのも構わずに、ソファーを蹴った足を倒れたそれに乗せれば、再び似たような声が聞こえてくる。
「おいカス。出かけるぞ」
「って、こ・のぉ……何しやがんだぁ゛ぁ゛あ゛?!」
腹部を圧迫され思うように声が出ない中、スクアーロがそれでも吠えれば、ソファーに足を乗せたままの元凶──XANXUSが、
「さっさと這い出ろ。行くぞ」
無茶な事を言って来た。
おいおいマジか。といつもの事ながら溜め息を吐きたくなるような注文に、スクアーロは目の前に落とされた車のキーを見て、「わかったからその足を退かせ」とキーを手に抗議した。
そうしたら、
「後十秒待ってやる」
と言って、今度はソファーに座ってくる。
「…。」
スクアーロはコノヤロ。と心の中で呟くと、ソファーをひっくり返さん勢いで抜け出たのだった。



××××



「混んでやがんなぁ…」
車は進むものの、いつものようにスピードは出ない。
街に出るとは言ったものの、一体何しに行くのか。スクアーロはハンドルを握り直しながら、隣に踏ん反り返って座っているXANXUSを盗み見た。
何をするでもなく窓の外を見つめ、しまいには欠伸をして目を閉じたXANXUSに、スクアーロはこっそりと溜め息を吐く。
「…………退屈か?」
そんな時、不意に掛けられた声に、スクアーロは自分の耳を疑った。
今、聞こえたのは幻聴か。
恐る恐るスクアーロは視線だけを横にずらすと、相変わらず目を閉じたザンザスの横顔が見えた。
やはり幻聴だったのだろうかとスクアーロが思っていると、XANXUSは「止めろ」と言ってきた。
「──は?」
キョトンとしたスクアーロに、XANXUSは横からハンドルを無理矢理切る。
「って、こら゛ぁ゛あ゛…!!」
叫んだスクアーロは事故を起こす前にと急ブレーキをかけた。途端、XANXUSは車のドアを開けようとする。
「っは?え・おいっ?!」
訳がわからずスクアーロは車を降りたXANXUSの後を追うと、どこに行くんだと腕を掴んで無理矢理止めた。
「離せカス」
静かに、だが怒りを滲ませた声で言われ、スクアーロは溜め息を吐く。
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