宝物

□体温
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「話にならねぇぞぉ…」
闇の中で刃の煌めきが素早く横切った。
そして数秒遅れて赤い鮮血が噴き上がる。
叫び声を上げる間もなく男は倒れ込んだ。
その男には頭はなく、首から下のみが横たわっていた。
スクアーロは己の左手首に巻き付けた刀を一振りし、こびり付いた血を振り払った。
「…っ、雑魚のくせに次から次へと沸き上がりやがって。おまけにお前らはあちこち逃げ回る。」
息無き屍はそんな言葉に反応することもなく、ただ血の水たまりを広げている。
スクアーロは夜空を見上げ、満月を見上げた。
「…予定が狂っちまったな。」
本来ならば5日間で終わると見込んでいた。
しかし思いの外手間がかかってしまい、今やっと任務を終えたところであった。
月の傾き具合からすると零時を過ぎているはずだ、と言うことは10日間もかけてしまったことになる。
任務に向かう前日、スクアーロはXANXUSにこの任務のレベルの低さに対し不満を漏らしたのを思い出した。
なのに自分ときたらこの様だ。
…頭いてぇ。
呆れと恥を感じ肩を落とすと同時に全身に疲れが襲う。
この10日間、満足に睡眠も取れていない事に初めて気がついた。
眠気を感じ始めたスクアーロは慌てて頭を降り闇の中に姿を消した。
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