短編
□満月の夜
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「んー・・・これは何だ?」
女が手にしているものは、へんてこな形をしているライター。
一般市民が到底使えそうもない代物だ。
もちろん彼女も一般市民なので、これがライターだなんて知る由もない。
「ま、いいや。もらっとこ。」
珍しいものは何でも、背負っているカバンに詰め込んでいく。
後ろで束ねた黒い髪。
まるで忍者のような黒い服。
全身黒尽くめのこの女こそ、盗人の正体だ。
「よーし。そろそろおさらばとしますか」
彼女が警察になかなか捕まらない理由は、行動がすばやいからだ。
モノを盗んで5分もしないうちに、また次の家へと去っていく。
そして証拠は一切残さない、プロの技も持っている。
そんな伝説の女(警察には女ということさえもバレていない)にも、弱点があった。
それは・・・
『おねーさん、ちょっと待ちな』
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