Novel.2

□ミラーのお留守番 〜ミラーと、シチューと、しあわせの時〜
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 私は、さくらさんの部屋から廊下に出た。
 さっきから、胸のわだかまりが抜けない。
 言葉にできない衝動が、私の脚を前へ、前へと突き動かす。
 そして、一歩、また一歩と歩みを進める度に、胸がどんどん高鳴って行く。

 どうして・・・・?

 そして、私はとある部屋に通づる扉の前で、その歩みを止めた。
 その部屋。
 そう。あの人の部屋。
 私は、来てしまった。心のままに・・・・。

 ・・・・どうしよう。
 このまま扉を開けて、あの人が中に居たら・・・・私、どうにかなっちゃうかもしれない。
 でも・・・・もしかすると、まだあの人はこの部屋に帰ってきていないかもしれない。
 その時、私はどうしたらいいのだろう。
 どうしたら・・・・。

 もじもじとしながら、私は扉の前にただ一人立ち尽くしていた。
 でも・・・・ただ、この場で時を無駄に費やすのは、あまりにも哀しすぎる。
 ここは・・・・。


 私は意を決して、扉に右手を伸ばした。
 右手を軽く握り・・・・。

 コン、コン。

 ノック二回。
 ・・・・返事が無い。

 コン、コン。

 再びノック二回。
 ・・・・今度も、返事は帰ってこなかった。
 胸で渦巻くわだかまりが、止まらない。
 わだかまりが衝動となり、ついに、私を一気に突き動かした。

「と・・・・桃矢さんっ!」

 バカッ!!

 私はドアノブに手を伸ばし、まるでこじ開けるかのように、その扉を開けて部屋の中に飛び込んだ。
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