Novel.1

□Lesson 6a 赤い彗星編
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 職員室での会談も早々に、新潮とマイキーは職員棟の屋上に来ていた。ここでの二人も職員室での状況と同じく、どこか険悪な雰囲気だった。
「コメット。何故この学園に来た」
「決まっとろうが・・・・“ボス”からの指令でくさ。でなきゃ、貴様とこげんか所で語り合う事なんかせん」
「もしや、彼女らへの・・・・」
「そうくさ。あん子らば支援せれ、って“ボス”からの指令でくさ」
「彼女らは私が見い出した戦士だ! 何故おまえが更に派遣されなければならん!」
「よぉ考えてみらんね、バロム。貴様のやり方じゃあ、あん子らは伸びるどころか、潰されてしまうばい!」

 新潮とマイキー・・・・いや、バロム・ザ・ジョーカーと“赤い彗星”コメットとの言葉のやり取りもまた、険悪そのもの。今にも火が付きそうな雰囲気だ。

「今までのあん子らの戦いんついてん情報は、“ボス”から受け取っとぉ。貴様、いっぺん全滅の危機に晒しとうやなかな! せっかく出た芽を摘むごた手荒な事ばしよって」
「待て!! どんな状況であれ、何事にも試練は必要だ! 悪い芽を摘んで、良い芽が伸びる傾向だってある!」

「貴様は前々から強引かったい」
「おまえのように、過保護なやり方は好かぬ!」

「よぉ言うわ、艶付け(カッコつけ)が。香水なんざ、男が付けるもんじゃなか」
「なっ☆ これは香水じゃない。制汗コロンだ! ここはただでさえ女子が多い学校だぞ! おまえのように、汗の臭いをプンプンさせられるか☆!!」
「こいは体質やっけんが仕方んなかと。汗止めも気休めにしかならんけんな」

「ちっ・・・・おまえとは本当に気が合わないな」
「全くばい。腐れ縁にも程があっばい」

 そう互いに言葉を吐き捨てると、ほぼ同時に手すりに身を委ねる二人。しかし、二人の状況と同じように、新潮は胸元から、マイキーは背中から、その身を委ねている。まさにすれ違い状態だ。

「そう言えば、コメット。いつまでそのタヌキグマ、消さないつもりだ? 手術すれば一発だろうに」
「こっ☆ こいはクマじゃなか! ケロイドたい! そいに、こいには大事か思い出んいっぴゃあ詰まっとぉと! 誰が何と言おうと、消されんもんは消されん!!」
「ほぉ? おまえの気質に似合わず、女々しい事を言うもんだな」

「ぬぅぅぅぅぅ・・・・貴様に言われとぉなか!!!!」

 そう吼えたマイキーは新潮の襟元を鷲づかみにし、右拳を振り上げた。

 と、そこに、

「トゥーラセンセ、新潮センセ!! 何してまんねんな!!」

 突然飛び込んできた関西弁。声の主は日向先生だった。
 日向先生は屋上出入り口に立ち、その緊迫した状況に目を見開いていた。
「日向先生・・・・」「ミスター、ヒムカイ・・・・」
「何か知らへんけんど、犬も食わん喧嘩はやめぇやめぇ! それにっ、もうすぐ全校集会でっせ。主役のトゥーラセンセが来んかったら、シャレにもならへんわ」
 そう言いつつ、二人を引き離した日向先生。さすがに二人よりも年上なせいか、後の諭し方も胴に入っていた。

「Oh・・・・Solly」

「ほな行こか」
「・・・・All right.」
 日向先生に先導され、その場を離れるマイキー。ふいと立ち止まり、新潮を見据えたマイキーの口元は、ニヤリと歪められていた。

(バロム・・・・命拾いしたな・・・・)

(ちっ・・・・)

「新潮センセ!! 何してんねん!! はよ行くで!!」
「あ、はい!!」
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