Novel.1
□Lesson 1a
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結果、あたしたち4人は登校時限を20分も残して早々と学校の校門をくぐる事となった。しかし、こやと同じ考えを持っていた子は結構いるらしく、教室にはほとんどの女子連中が既に集まっていた。
元々女子校だった花園学園はとにかく女子が多い。だいぶ前に男女共学になったらしいけど、男子は中等部高等部、さらに大学を合わせても、生徒全体の2割にも満たない。もちろんあたしたちのクラスも同様。ほとんどが女子なのだ。
あたしが言うのもなんだけど、あたしのクラスの男子にはろくなのがいない。男子がみんな子供っぽく見えて、恋愛とかの対象にはできないんだよな‥‥。
えっ? あたしがクラスの男子よか背が高いから?
‥‥ほっといてよ。同じクラスのなるみもこやも男子よか背が高いんだよ。クラスじゃ「3本柱」なんて変な言われ方されてるんだから。
でも135しか身長がなくって、小学生とよく間違われるほしよかましだとは思うけど。
さて、あれこれやってたら時間が過ぎて行き、始業時間のチャイムが鳴った。
「おはようさぁん!」
教室の扉がガラリと開き、独特なアクセントの声が教室に響いた。
クラス担任の日向 環先生だ。
あたしたちは日向先生を苗字で呼ばないで「たまき先生」って呼んでるんだけど、当のたまき先生はこの呼び名は「女の名前みたいやからやめてくれや」って嫌がるの。
「きり〜つっ! 気をつけ!」
いつもありきたりな朝の学校風景。でも、たまき先生の場合はこの後がちょっと違う。
「礼!」
ち〜ん!
どんがらがっしゃあ〜ん!
いきなりの仏壇の「鈴」。出鼻をくじかれたあたしたちはその場で見事にずっこけてしまった。
実はたまき先生、おもしろい、おもしろくないに関わらず、毎朝日替わりで何らかの一発ギャグをやるのだ。
今日のは‥‥インパクト強烈。
「えぇでえぇでそのリアクション〜。こりゃ吉本でもイケるんとちゃうかぁ?」
「先生‥‥毎日毎日、よくネタが尽きませんね」
「これやるために毎晩ネタ考えとるんや‥‥とま、今日はこんくらいにしとこか」
生徒の声もさらりとかわし、たまき先生はごん、と生徒名簿を教卓に叩くように置いた。
「‥‥痛ったぁ」
実はこれ、先生の定番ギャグ。教室の中ではくすくす笑いがちらほら。
「ほな出席取るで。出席しとらんモンは返事せんでええからな」
同じく定番ギャグでダメ押し。教室は爆笑の渦に包まれた。
「全員来とるようやな‥‥ほな、本題いこか」 ここでたまき先生は咳払い一つして、
「新潮センセ。入ってきてえぇで」
「えぇ!?」
あたしを含めてクラスの全員が声を上げ、入り口の扉を注目した。