Novel.1

□Lesson 6a 赤い彗星編
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ムンパレ☆カルテットのセーラー白書

Lesson 6 赤い彗星編
 月下の友情 漢、マイキー先生の涙(前編)


「ミスターハナゾノ。今日から、よろしゅうに」
「いぃやぁ〜うれしいだぎゃあ♪ 英語だけやのぉて日本語も堪能たぁ。そんな外国人講師を招けるとは。こりゃあ学校経営するもんにとっちゃあ誉れだがや♪」
 花園学園理事長室。
 新任臨時英語講師、マイケル・キーマ・トゥーラと握手を交わす小柄な初老の男、学園理事長、花園 薫は名古屋弁まるだしで半ば涙ぐんでいた。
「教師生活苦節30年。おっかぁの建てたこの学園を継いで、共学にして、はや5年・・・・トゥーラ先生。ほんとよぉ来てくんさった・・・・ほんとよぉ」

「ミスター・・・・気持ちはよぉわかったけんが、はよぉ“はな”かんでくんしゃい。手に垂れよぉばい(-言-;)」

 そうマイキー先生が言うのも無理はない。花園理事長は涙でくしゃくしゃになっている上に、見事な棒ばなまで垂らしていたからだ。

「あ・・・・わりぃだがや」
 マイキー先生の大きな右手を、ダブルシェイクハンズで握っていた花園理事長。左手で差し出されていたポケットティッシュを何枚も鷲づかみにすると、音高らかに“はな”をかんだ。
 そんな光景に顔をしかめるマイキー先生。右手に付いた理事長の鼻水をぱっぱっと振るうと、残りわずかのティッシュで右手を拭うのだった。

「・・・・さっきは、御見苦しい所を御見せしてしまいましたな」
 “はな”をかみ終え、ティッシュの玉を羽織の懐に仕舞い込んだ花園理事長。しゃんと背筋を伸ばし、威厳のある教育者の顔になっていた。
 さっきまでの支離滅裂な理事長の姿は、どこへ行ったやら。
「では、職員室に参りましょうかね」
「イ・・・・イェス、ミスター」


「皆の衆〜っ♪!! 注目してくだされぃ!!」

 猫の・・・・いや、鶴の一声と共に職員室の扉を開け放った花園理事長。
「今日から中等部の英語講師として赴任された、マイケル・キーマ・トゥーラ先生じゃ!! 皆の衆。拍手で御迎えくだされぃ♪!!」
 理事長が扇子で舞わせる紙吹雪と、教師達からの拍手に出迎えられ、マイキー先生は自分には狭い扉を、大きな身体を小さくして、職員室へと足を踏み入れた。

「Nice to meet you.I'm Michel Kuima Tura. ・・・・以後、よろしゅうおたの申します」

 英語と日本語を交えたマイキー先生の第一声に、職員室の中はどよめきの声が上がった。

「Hey!! Mr.Tura.」

 突然の英語の声が上がった。
 声の主、高等部英語講師、クリストファー・リギオンは足音を立てながらマイキー先生へと近付き、マイキー先生が掛けていた黄色のサングラスを鷲づかみにして取り上げた。

「室内デさんぐらすハ取リタマエ!」

「ちょ、ちょっと・・・・リギオン先生」
 この光景に焦る花園理事長を尻目に、マイキー先生は怒りの顔色のリギオン先生に対し、涼やかな英語で言葉を返した。

「Mr.Regeon. 私ハ先天性ノ色弱ナンデス。ソノさんぐらすハ、私ノ目ヲ補ウ大事ナモノナンデスヨ。言ワバ、私ノ目ト同ジ。デスカラ、返シテ、イタダケマセンカ?」

「オ・・・・Oh・・・・Solly.」
 マイキー先生の言葉に納得したのか。リギオン先生はサングラスを恭しく返すのだった。

 サングラスを再び掛け、ふと視線を感じたマイキー先生。合わせたその視線の先にいたのは、教育実習中の大学生、新潮 雅だった。
「ミスターハナゾノ。あの若者は?」
「おぉ♪ あやつは教育実習生の新潮君じゃよ。教育界の期待の星じゃ♪」
 そんな理事長の声とはうらはらに、マイキー先生と新潮との間には、憎悪にも似た感情が渦巻き、目には見えない激しい火花が散り始めていた。

(シュバリエ・コメット・・・・何故、ここに!?)

(パラ・バロム・・・・こげんか所で出会ゆったぁな)
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