Novel.1

□Lesson 3
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ムンパレ☆カルテットのセーラー白書

Lesson 3
 彼女達はライバル!? 嵐を呼ぶ月影三姉妹


「月影 紡ですぅ」「束です」「羽佐美でぇ〜す♪」

 登校時限前の朝の中等部職員室。多くの教員達の中に紛れ、三人の女子生徒がそこにいた。真新しい制服を着ている所を見ると、どうやら転校生のようだ。
「わいが担任の日向や。しっかし3人揃って同じ顔っちゅうのも、えぇ感じせぇへんなぁ‥‥」
「そう言われてもぉ」
「私達、三つ子ですから」
「でも先生っ。ちがうトコもあるよ」
 しかも、同じ背格好に同じ顔。髪の艶も同じ。彼女らは間違いなく三つ子の姉妹だ。外見で違う所はせいぜい髪型と身に付けたアイテムくらい。紡はセミロングの髪に眼鏡を掛け、束はショートヘア。羽佐美は三つ編みにした長い髪を頭の両側にお団子状にまとめ、赤いリボンで止めていた。
 性格を垣間見ると、紡がおっとり型で束がどこか冷静。羽佐美はマイペースなお元気娘という感じが目に付く。
 外見が似ていても内面はばらばら。三つ子と言っても、全てが同じではないのだ。

「おはようございます!」

 三姉妹と日向先生のいる机の側とは反対側の扉を開け放ち、息を弾ませながら職員室に駆け込んできたのは、教育実習中の大学生、新潮先生だ。
「おそよ〜。まぁだ学生気分抜けとらんよぉやなぁ〜」
「‥‥って、僕まだ学生ですけど?」
「冗談やがな‥‥そやけど新潮センセ、どないしたん? その頬っぺた」
 そう日向先生が聞いたのも無理はない。新潮先生の左目の真下にはどでかいバンソコが、べったりと貼り付けられていたからだ。
 しかも派手な柄のバンソコなだけに、余計目立つ。
「えっ? あ、これですか。ちょっとしたケガですよ。気にしないでください」
「せやけど目立つでぇ〜。えぇ顔がだいなしや」
「あ‥‥どうも」

 その時だった。

「あぁ〜っ! “フール”だぁ♪!」

 突然、黄色い声を上げて新潮先生の所まで職員室内を駆けて行く女子生徒。それは三姉妹の末妹、羽佐美だった。羽佐美はそのままの勢いで新潮先生の腕に飛びついた。
「“フール”っ♪“フール”っ♪」
「あ、こ、こら!」

(その呼び名はやめろ!)
(えっ? だって“フール”は“フール”だもん)
(周りが怪しむだろうが‥‥だからその呼び名をこの場で使うのは控えろ。“クローソー・マーブル”)
(‥‥うん)

「なんやこの子らと知り合いか? 新潮センセ」

「あ、えぇ。この子らがまだ小さいときに、お隣同士だったもので」
「はぁい♪そうなんで〜す♪」
 どうやら、小声で交わされていた二人の会話は周囲には漏れていなかったようだ。

「あぁ〜っ! 羽佐美ちゃんだけずるいですぅ!」
「雅兄っ! 羽佐美と何ひそひそ話やってるのっ!?」

 姉である紡と束も羽佐美の所に駆け出した。結局、新潮先生は三姉妹に囲まれて、半ばもみくちゃにされてしまっていた。
 そんな光景を日向先生ら、他の教師達は呆れ果てて傍観するしかできなかった。
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