TOH夢連載【沙羅の実】

□第4話【始まりの刻】
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勢いよくシングは壁に叩きつけられ、ルベラはヒスイが庇ってくれたので、壁への衝撃は免れた。



ルベラ
『買R、コハクちゃんッ!!』



急ぎ視線を向けると、コハクの身体は空中に浮かび出す。

虹色に光を放つスピルーンの花が、胸の中心から飛び出して天井を破り天高く登ってゆく。

すると、七色のそれぞれに分かれたスピルーンが、世界各地に散らばっていくのが見えた。



ルベラ
『あぁ・・・間に合わなかった・・・
私の力が足りないばかりに・・・(涙)
(夢が現実のモノへと・・・)』



自分の力の無さにその場に崩れ落ちる。

だがヒスイだけは状況が分からず、シングに掴みかかり、問い質す。



ヒスイ
「狽ィい、てめぇ!
何をしやがった!?
コハクは大丈夫なんだろうな?」



絶望の表情をしたシングが答えるより早く、目を覚ましたコハクが起き上がり、呟くように言葉を繰り返した。



コハク
「・・・・・・・・・・・・。 大丈・・・・・・夫。」




胸倉から手を離し、傍へと駆け寄る。



ヒスイ
「コハクッ! よかった・・・・・・・・・・・・。
兄ちゃん、心配したんだぞ?」


コハク
「・・・・・・よかった・・・・・・
・・・・・・心・・・・・・配・・・・・・」



虚ろな瞳で断片的な台詞に、不信感を覚えながら肩を軽く掴む。



ヒスイ
「・・・・・・・・・・・・やめろよ、コハク。
ふざけてっと怒るぞ?(苦笑)」


コハク
「・・・・・・怒る・・・・・・って
・・・・・・・・・・・・何?」


ヒスイ
「おい・・・・・・もう一回聞くぞ。
お前、コハクに 何してくれた?」



肩を震わせながら振り返らず問い掛けると、
下を俯いたままのシングが申し訳なさ気に返答。



シング
「ごめん、オレ・・・・・・・・・・・・
コハクのスピルーンを
・・・・・・・・・・・・バラバラにしちゃった。」


ヒスイ
「・・・・・・・・・・・・スピルーン?」


シング
「スピリアの・・・・・・核で・・・・・・
人の感情を生み出す源・・・・・・です。」


ルベラ
『胸から咲いていた花がコハクちゃんの感情を司るスピルーン…
砕いてしまうと、
興奮・愛情・恐怖・怒り・悲しみ・喜び…
全ての感情を失う人形へと成りさがる…』


ヒスイ
「・・・・・それをぶっ壊したってか?
つまりコハクは、もう二度と笑う事も・・・・・・」



凄い形相で胸倉を掴み、怒りをぶつけながら右頬を殴りつけた。



ヒスイ
「怒る事も………」



崩れるシングを再度掴み上げると、逆の頬をまた殴りつける。



ヒスイ
「・・・・・・・・・・・・悲しむ事すら
ねぇって事かぁぁーーーッ!!!


『ルベラ
狽竅A止めてヒスイ君ッ!!』



涙を流し叫びながら腰へと縋りつくが、シングを壁に投げつけた衝撃で振り飛ばされ、地面にと尻餅をつく。

その様子を、黙ったまま眺めていたコハクが
無表情のままルベラにそっと手を差し伸べる。

そして、ポツリとヒスイに向け、静かな声で口を開く。




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