TOA夢連載【たんぽ穂】

□第3楽章
1ページ/5ページ

ちょっとだけかは さて置き…

迷子になりながら魔物を倒しながら道を下って行くと、山道をやっと抜けられたのか、木々が開けた場所へ辿り着いた。



ノーサ
『どうやら無事に、渓谷からは出られそうですね。』


ルーク
「誰かさんのせいで時間がかかったけど、ようやくここから出られるのかよ。
もう土くせぇ場所はうんざりだ。」


ティア
「誰かくるわ。」



暗闇の中に目を凝らすと、前方にある細い道の方側から1人の男性が姿を現す。

向こう側もこちらに気づいたのか、その瞬間、何故か驚きの声を上げた。



???
「狽、わっ!
あ、あんたたち、まさか漆黒の翼か!?」


ティア
「… …漆黒の翼?」



覚えのない言葉に首を傾げてみると、男性は律儀に答えてくれた。



???
「盗賊団だよ。
この辺を荒らしてる男女の三人組で…

狽チて、あんたたちも三人組じゃないか!!」



落ち着いているのか慌てているのか、百面相の態度に、少し和んだ。



ノーサ
『ふふっ…
盗賊団と間違われてますわね〜。
只今ここに参上しちゃいました!!
ルーク様と帰り隊☆(キラリーン)
みたいな〜?(笑)』


ルーク
「矧ぶなっつーの!!
あと、意味ない事も言うな!!」


ティア
「はぁ…(溜息)
私たちは、盗賊団ではありません。」


ノーサ
『うんうん。そうですよ〜…
漆黒の翼なんて、初めて聞く名前なのですから。』



ティアとノーサの台詞に、男は疑り深い感じで視線を向ける。



???
「… …本当に 漆黒の翼じゃないんだろうね?」


ルーク
「… …フン。
俺をケチな盗賊野郎と一緒にすんじゃねぇ。」


ティア
「… …そうね。
相手が怒るかも知れないわ。」


ノーサ
『仕方ないですよ。
ルーク様は、俺様気質☆』


ルーク
「狽のな… …!」



抗議する言葉などサラッと流し、2人は男の近くに歩み寄った。



ティア
「私たちは道に迷って ここに来ました。
あなたは?」


ノーサ
『どうして単独でこのような場所に?
一般人の方には危ないですよ。』



丁寧な2人の態度に安堵したのか、こちらに向けていた警戒を解く。



???
「俺は辻馬車の馭者(ギョシャ)だよ。
この近くで馬車の車輪がいかれちまってね。
水瓶が倒れて飲み水がなくなったんで、ここまで汲みに来たのさ。」


ノーサ
『まあ、それは大変で…』


馭者
「良くある事だからな、何てことないさ。」



長距離を走る馬車には付きまとう災難だと言っても過言ではない。

倒れて水は溢れてしまったが、水瓶が割れなかった事が幸いだと、豪快に笑ってみせた。



ルーク
「馬車か!助かった!」


ティア
「馬車は首都へも行きますか?」


馭者
「ああ、終点は首都だよ。」


ルーク
「乗せてもらおうぜ!
もう歩くのはうんざりだ。」


ノーサ
『確かに 道は不慣れですし、馬車に乗るのも良い選択だったり…』


ティア
「そうね。
私たち土地勘がないし、お願いできますか?」



男はこの場所から首都までの距離を頭の中へ瞬時に浮かべ、それに相当する金額を弾き出す。



馭者
「首都までとなると、一人12000ガルドになるが持ち合わせはあるかい?」


ノーサ
『一人12000ガルドということは、三人合わせて36000ガルドですか…
結構な額になってしまうわね。』


ティア
「高い… …」


ルーク
「そうか?安いじゃん。
首都に着いたら親父が払うよ。」



金銭感覚が全く無いルークに男は信用がないであろう口調。



馭者
「そうはいかないよ。
前払いじゃないとね。」



ティアが少し悩む仕草をすると、懐から小さな何かを取り出し 男の前にそれを差し出した。



ティア
「… …これを」



手にはスタールビーと呼ばれる宝石が中心に飾られた見事なペンダント。



馭者
「こいつは大した宝石だな。」


ノーサ
『細工が見事な一品には違いない…けど… …』



感嘆の言葉を並べ立てる馭者の姿に、一瞬ティアが淋しそうな瞳を見せたのをノーサは見逃していなかった。

.
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ