短編

□いつか
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俺は佐助のように、頭は良くない。この頃は、とくに、『も〜旦那ってばトロいんだからぁ』と馬鹿にされる事が多くなってきた。

それでも佐助は、傍にいてくれる。呆れながらも。そんなささいな事ですら、喜んで。

馬鹿にされるたびに、落ち込んだ。

「佐助・・・」

「何?旦那」

「いや、なんでもない」


佐助、知っているのか?俺は佐助にあこがれていたんだ。

なぁ、佐助、俺のこの気持ちは、なんなんだ?

俺は、おかしいのか?教えてくれよ。佐助・・・。

「佐助は好きな女子はいるのか?」

「ん?あぁ、いるよ?」

「そぅ・・・でござるか・・・。」


佐助、佐助は、いるのか。俺のこれは、『好き』?『あこがれ』か、どちらなのだ?

きっと、あこがれであろうな。


「誰でござるか?」

「えぇ〜と、春華姫。」

「綺麗な名でござるな」

「ありがとう。」

「え?」

「え!ちょっと春華姫!?」

「なぁに?佐助?」


なんだか、佐助が振り回されてるようで、見ていておもしろかった。


「どこから聞いてたの!?姫!!」

「えぇ〜と『誰でござるか?』らへんかしら?」

「春華姫ぇ!部屋から出るなって言ってあるでしょう!?」

「守るとでも思っていたのか?」

「うぅぅ・・・」


春華姫は、名前の通り、春に咲く花々のように、綺麗だった。そして何より、心地よい穏やかな空気に包まれていた。そこにいるだけで、空気が清く変わった気がした。


「ただでさえ、体が弱いでしょ!?」

「気のせいよ。」

「いや、絶対に違うでしょ!?」

「いいえ?」

「なんでここに来たの!?」

「佐助と話をしに」

「いやいや、これケンカでしょ」

「佐助、辛いなら辛いと言って」

「は?」

「嫌なら、嫌だと言って・・・ね?」

「え?」

姫の言ってる意味は分からなかったけれど、姫が佐助を大切にしていているのは、分かった。

「心の傷は、見えないから。」

「あぁ、ありがとう」


きっと佐助も姫を大切にしていて、姫も佐助を大切にしていて、とても綺麗な優しさのカタチなんだなぁと思う。


―・・・なぁ、佐助。
俺なんで、佐助が大切なのか、分かった。
きっと佐助の傍にいると、どんどん世界が見えてくる。
確かに佐助にはあこがれていた
けど、それはこのことを知る為だったんだ。
いつか、佐助のように、大切な人に出会うために―・・・


いつか出会う日の為に

END
 

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