短編

□闇と光
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目が覚めると、いつも枕元に、百合の花がある。

きっと、長政様がおいていったのだろうと思う。


「―・・・神に捧げる・・・花。」

長政様は、良い人。けど・・・、長政様、知ってる?市は、悪い人なんだよ。

早く、気づいてほしいと思う。けど、知られたくないとも、思う。

気付いてしまったら、最後。長政様はきっと市を捨てるわ。

「長政・・・・様。」


雨上がりの空は、凛と澄んでいて、地上に星が、降ってくる。長政様は、雨の雫に光が反射しているだけだって、言っていたけど、市は違うと思う。

「綺麗・・・。」

長政様、市ね、浅井家に嫁ぐまで、知らなかったの。こんな綺麗な景色があるって事。ここにくるまで、市は人形だったから。

兄様の思いのままに動いていただけだったから。

「長政様は、市を大切にしてくれる・・・の?」

百合の花は、長政様のように、静かに、優しく市を見てる。

「当然だろう?」

ふっ、と後ろから、長政様の声が聞こえた。市の気のせい?

「え?」

長政様の、あたたかい手が、市を包んだ。

「不安だったのか、市」

「長政・・・様」

長政様が、きてくれた。長政様は、市を大切にしてくれる。兄様は、してくれなかったこと。市が一番、望んでいたこと。



―・・・市を、必要としてくれる事―・・・。
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