★むくびゃく。

「……白蘭」

幾度となく目の前の美しい男の名を呟いて、耳を口に含み甘く歯を立てる。小さな音節を聞き取ると共に赤く色づいた其処をちゅ、と弱く吸って舐め、白銀色の髪の毛の柔らかな薫りを嗅いだ。全てが白蘭の匂いに包まれ、脳髄までもが支配されていく。もう精神的に限界だった。改めて目を合わせると、あろうことか彼の宝石のような瞳から大粒の涙が流れていた。

「びゃ……白蘭? す、すみません。止めましょうか?」

「ううん……いいの、骸君は悪くないよ。ただコンタクトが渇いて」


そういえば。忘れていたが、彼は視力が悪かったことを思い出す。大分前にそう教えられたのだが、全く忘れていた。骸は慌てて眼鏡にすればいいと口走ると、白蘭は

「嫌だよ。だって僕の眼鏡姿、可愛くないんだもん」

と、涙を拭いつつ子供のように拗ねた。
阿呆みたいな答えに呆然としていたが、直ぐに短く特徴的な笑い方で喉を鳴らす。

「じゃあ外してください」

「え、いいの?」

僕、本当近視だから遠く見えないよ、と心配そうに言う白蘭ににっこりと微笑んでから、耳元で自慢げに呟いてみせた。


「今日は貴方から十センチ以上離れませんから」


( 骸君って意外とお茶目なんだね )



クフフ、管理人にお言葉をいただければ幸いです



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