捧げ物
□大きな世界に恋する兎
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毎朝僕は決まってここにくる。
此処は教団の敷地内ではあるが、来る者は少ない。
と言うよりは、もともと外に出る者自体が少ないだけだが。
そんな事はどうでもよくて、僕がここに来る理由は、いつも彼が来るから。
嗚呼、ほら来た。
「よっアレン。毎日暇なんさね。」
寝起きとは思えないほど明るい笑顔。
「昼から任務ですよ」
へー、と興味の無さそうな返事をし、そこら辺に寝そべり瞳を閉じる。
ラビは何時もこうやっているが、決して寝てはいないらしい。
話もキチンと聞いている。(精神統一でもしてるのだろうか?)
「ラビは毎朝何してるんですか?」
毎日疑問に思っていたが、聞こうとはしなかった質問。
それを今日は聞いてみる事にした。
「音、聞いてるんさ」
「音、ですか」
小さく首を傾げてラビを見る。
ラビはまだ瞳を閉じて、気持ちよさそうにしていた。
「目を閉じて、自然の音を聞くと、世界がどれだけ広いかわかるさ。自分がどれだけ小さいか。」
そう言い終わったラビは起き上がり、綺麗に笑った。
「変わった趣味ですね」
「まぁな、アレンもやってみれば」
少し考えていたが僕は、パタンと寝そべった。
「本当だ、いろんな音がする」
「だろっ!それがおもしれぇんさ。」
ラビがあまりにも子供っぽかったので、つい笑ってしまう。
それに気付いたラビも、一緒になって笑う。
二人の小さな笑いが、大きな世界に小さく響いた。
ーend