神話

□*序曲*
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遥か昔、まだ戦争等と言う言葉すらない平和な世界。

人々は誰もが皆、慎ましく生きていた。

太陽と大地に感謝し、欲深き者など存在しない。
まさに、理想の平和が何千年も続いた。

そんな中、炎の神、メテアと氷の神、アランは相対する種族の皇女と皇子と言う立場であったが、互いに惹かれ合い、そして愛し求めあった。

最早、この人無しでは生きられ無い、と言うところまで登り詰めたとき、メテアに悲劇が起きた。メテアの兄、カルロフが、愛し合う二人に嫉妬し、嫌がるメテアを無理矢理組み敷いたのである。

その事を知った、アランは怒りに身を任せ、カルロフの忠告も聞かずに、カルロフを殺してしまう。

カルロフに剣を突き刺したと同時に、メテアは目を見開いてその場に倒れた。
アランは慌てて駆け寄り、メテアの細い肩を抱き寄せたが、既に息を引き取った後だった。

徐々に冷たくなる絶望に胸を突き破られた。

そして、カルロフの忠告を思い出す。

『俺を殺せば、お前の大切なメテアも俺の跡を追ってくるぞ!』

―――――そう。
カルロフの言う通り、メテアは跡を追って死んでしまった。

メテアから流れる赤い血の出所に、目をやれば、カルロフと全く同じ箇所――――――――心臓を一突きされ、ほぼ即死だった。


嗚呼、俺はなんて事をしたんだ。

メテアを殺したのは、他でも無い、俺自身、……この手で殺したのだ。

愛するメテアは二度と戻って来ない。

愛したメテアは…

この気持ちさえも過去のものとなってしまうなんて…


――――嗚呼、メテア……メテア、メテアメテアメテアメテアメテアメテアメテアメテアメテアメテアメテア

俺は、俺はなんて事を……


赤い赤い血の温かさが、こんなに心を凍らせるなんて考えてもいなかった。






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