□蟲喰いだらけ 弐
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都会のビル郡の中に埋もれる、巨大なビルの前に、黒い1台の車が止まった。中から降りた男はかっぷくの良い50代の威厳ある顔つきの人物だった。
ビルの外で待っていた男が、この本日のお客様に向かって丁寧な挨拶をし、中へと案内をする。ロビーの受付嬢はにこやかな笑顔で客人を出迎え、頭を下げる。
ロビーには人影もなく、静寂な時間がゆっくりと流れているように思われた。此所だけでなく、おそらく上の階でも同じようなものだろう。
間もなく、エレベーターが到着を示し、扉が開いた。エレベーター内には、仮面を付けたスーツ姿の男が乗っていた。
「これは、〇〇〇様でしたか。お待ちしておりました。どうぞこちらに」
常連客で、資産家でもある男を見て、男はうやうやしくエレベーター内へと招き入れた。
もっとも、このビルに来る客の多くは、金持ちであるため、そんな彼らへの配慮は十分行き届いている。エレベーター内には絨毯が敷かれ、ソファと飲み物もセッティング済み。
「本日は、このようになっております」
仮面の男は営業スマイルでメニューパネルを示し、操作する。大型画面に映し出されたのは、今日の商品。
少年から青年までの、ハメ撮り写真だった。ここで紹介されるのは、だいたいがオススメか新人である。
たいていの常連になってくると、滅多に指名替えはなく、このエレベーター内でのやりとりは、世間話のようになる事が多い。