□神の子ら
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―――――

「‥ ゥ 止め ‥テ下さ‥ァア! …ぅ…‥」

小さくて可愛い顔の少年は、身体中に鎖を巻かれ、ボロボロの布を纏い、暗闇に月明かりで照らされて蒼白く浮かんでいる。
少年の顔は恐怖によって醜く歪み、振り下ろされる鞭に怯えきっていた。
そんな表情を楽しみながら、次はどうしようかなあと、鼻歌を歌いながら次々に道具を手にし、吟味中の男が一人。こちらも同じく照らされて蒼白く浮かんでいる。

「〜♪ フフ‥ この前の子はどうしたんだっけなあー。あ この前はこれですぐ死んだから、今回はこれからいこうかな」

男は手に持ったそれを、少年の口に無理矢理押し込め、ペンチのようなモノを一気に握った。

―――ブッチン
「ぎゃぁあああああ゛―――」

ざっくりと肉が引き裂かれる音と少年の断末魔の叫びはどちらが先に出るだろうか。そんな疑問から、男はこの道具を選んだのだ。

「…クス、 まだ一ヶ所穴を開けただけじゃないか。そんなに死に急がなくても良いのに…」

命の輝きを失った瞳は、恐怖からか半分ほど飛び出し、何も映さず、ただ空中を睨み続けていた。
少年が死んだと解った男は、つまらなさそうに持っていた道具を投げた。
その時、扉が開いて、細身な男がその部屋へと入って来た。

「…蓁誣(シンファ)、またこんなに汚して……」

部屋へと入って、残酷な仕打ちを受けた少年の亡骸を一蔑すると、まるで子供を叱るような、呆れたような調子で、返り血を浴びて笑っている男――蓁誣のそばへと歩み寄っていく。

「…ごめんね、蓁傴(シンウ)。つい、血ィ出して見たくなっちゃって」

蓁誣は悪戯っ子のような笑顔で笑いかけ、軽く頭をかいた。

「…血を見てどうすんだ?色なんてどれも変わらんだろ‥」

顎で先程の少年の亡骸を指す。

「俺と蓁傴の血の色は赤じゃん」

「…ああ」

どんどんと体温がなくなっていく死体からは、真っ黒な血が流れている。血は少年の蒼白い肌を伝わり、床に黒い水溜まりを作っている最中だった。

「…失敗作の血の色は黒い。だけど、俺達だけは違う」

「…なんだ?」

何が言いたいのかが、掴めない。

「俺と蓁傴は、失敗作達と違って、命の制限が無いだろ?…それに‥」

―――ガリッ

「…!」

「味も最高」

蓁誣が蓁傴の手をとり、小指の第一関節から先を歯で千切り、骨ごと食べた。いや、爪は流石に食べれないらしく、吐き出した。びっくりした蓁傴が、手を引っ込めると同時に、なくなった指の先が、すぐに再生される。

「…腹減ってんなら、もったいないからあっちから食え」

突然の蓁誣の行動にも、冷静に突っ込む蓁傴。これまで了承無く噛みつかれた事は、幾千とある。そのたびにつっかかるのは、面倒だと、蓁傴はある程度の“おいた”は、目を瞑る事にしたのだった。

「いやだよ。あんなデキソコナイの奴なんて。それよりも俺は、蓁傴が食べたい…」

「…ハァ、………?」

失敗作で遊んだ後はいつもこうだ。赤い血が見たくなるらしい。蓁誣の舌のザラザラした感触を手の甲で感じ、今日は手からかと、他人事のように考えていた。しかし、蓁誣はいつまでも歯を立てようとしない。

「今日は…、蓁傴が俺を食べて‥」

「…良いのか?」

珍しい事もあるのだな。自分から食べてくれなんて。普段は俺が頼んで食わせてくれるのに。
戸惑いながらも、蓁誣の細い指に、舌を這わせて、手に着いている黒い血を舐め取っていく。すると、蓁誣は唐突に、話し出した。
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