神話

□*冷たい主*
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宴の場から連れ去られたカナリアは、かつて自分が住んで、幸せに暮らしていた城に居た。

しかし、そんな思い出の詰まった場所に居ても、心が晴れるどころか、言い知れぬ恐怖心が募るだけだった。

改めて、自分の居る場所を確認する。
大きなベッド、その柵から伸びる鎖は、自分の足首へと繋がり、逃げられ無いとわかった。

だが、自分には逃げるつもりなど無い。寧ろここに居るのは、都合がいい。

―――優しかった兄様と姉様を殺した、憎き氷の皇子を殺すために、自分はここに居るのだ。

この怒りを忘れるな――

そう言い聞かせていると、いつの間にか、自分を覆う冷気の存在を忘れられた。

上体を起こし、まずは足枷が外れないかといじっていると、そこには見知らぬ男が立っていた。

「うぁ!!」

あまりにも驚き過ぎて、思わず変な声を出したらその男に、少しだけ、ほんのちょっと笑われたのか?その顔に目を奪われた…

「‥笑った……?」

自分が勝手に、この男は笑っているイメージがないな、と初対面の人間に対してそんな感じが頭の片隅にあった為、男が笑った事に、そうつぶやいてしまった。
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