□3131-夏様
1ページ/2ページ


「高杉…、何故俺だけ殺さなかった?」

宇宙海賊春雨と鬼兵隊が手を組んだ事は知っていた。だが、その攻撃は突然の奇襲作戦より始まり、頓所に居た大多数の隊士達は重症を負った。その時丁度地方に隊士を集いに出ていた、局長、近藤勲、並びに副長、土方十四郎、一番隊隊長、沖田総悟、その他少数の隊士達は、この奇襲を受けなかったが、新選組としてのダメージが大きすぎた。壊滅状態に陥った新選組を葬るには赤子の手を捻るように簡単であったし、いつ襲われてもおかしくなかった。

だから、いつもより数倍神経を磨ぎ清ましていた。

だが…

「なぁ、総悟。これで俺の事だけを見てくれるよなァ?だって、お前の周りの奴らは全員、死んじまったもんなァー」

狂ったように笑いながら、赤く染まった男は虚空へと手を伸ばした。

男の眼は、光を映していない。

土方が死ぬ間際に残した一撃を喰い、片目すら見えなくなった。

「なぁ、総悟。俺が憎いか…?俺が許せないか…?」

「…さあな…………」

「クク、ハハハ、残念だ…。最期は俺の事だけを考えて逝って欲しかったのによォー?…例えそれがどんなに怨まれていようが、頭の中を俺だけにしたかった」

虚ろな眼は、寂しげに、儚げに、何より愉しげに歪められ、愛した人に向けられた。

「一緒に逝ってやる…」

その台詞を聞くと、高杉は冷たい刃が首から肩へ、そして胸へと滑り、暖かい血飛沫きが出たのを感じて、笑いながら右手の刀を振るった。



切り付けられたものの、致命症は免れた。
どんどん溢れだし流れて行く血液を見ながら、腕の中に抱く人物にすがりつくような形で、冷たく無機質な鉄の塊を腹に鎮め、柔らかい肉を切り裂き、散った。



生まれ変わったら、
貴方の側にいるように

逝き着く先が貴方と同じ
地獄であるように

貴方よりも先に

貴方を見つける為に

殺し合いましょう?


屍が転がるその中で、
2人の顔だけが穏やかだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ