変態
□愛と哀とマリオネット
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☆〜西園寺家中庭〜☆
「ねー、お兄ちゃん、どうして今日はお月様が居ないの?」
四歳の可愛い弟は、僕の洋服の裾を引っ張って首を傾げた。
「今日はきっと、お月様のお休みの日なんだよ」
にっこりと笑って、小さな可愛い弟の目線に合わせて僕は言った。
本当は太陽の光が月に当たってないだけで、月が人の目に見えていないだけ…と説明するのは、面白味にかける。
「ていきゅうびって事?」
「……そんな言葉、どこで覚えたんだい?」
「れい君が教えてくれたの!その日はお店が閉まっちゃうんだって!」
「………そう」
…れい……赤沢家の長兄か……よくも弟になんて可愛くない知識をッ
「どうしたの?お兄ちゃん…」
可愛い弟が心配そうに見上げていた。
「ううん。なんでもないよ」
イカン……つい本性が。
「でね、教えてもらう代わりに、れい君にちゅーしたんだよぉ」
「へー、そうなんだぁ……??!!」
……え?今なんて!
「人にものを教えてもらったときは、お礼にちゅーってしなくちゃダメなんだって〜」
「…………」
弟のちゅーを………
僕だってしてもらった事ないのに………
「……赤沢家潰すか」ボソッ
弟の純真無垢なハートを汚すカスは必要ないよね?
「だからお兄ちゃん、ちょっと座って」
「……!?/////」
「お兄ちゃん、教えてくれてありがとう!」
柔らかい唇が、頬に触れ、軽く音をさせた後、天使の笑顔がそこにあって………………
「………気がついたら、要のことを、気絶するまでキスしてたっけ(笑)」
歩く卑猥物は、幼い日の思い出を語りながら、要だけしか写っていないアルバムを抱きしめ、だらしなく鼻の下を伸ばしていた。
「………そんな思い出話聞かせる為がわざわざ呼び出したんですかァ?」
「えー?だって明日は要の学校の授業参観だよ!堂々と要の傍に居られると思ったらテンションあがっちゃって〜」
「アンタ、またこんなに酒飲んで………ほどほどにしろって言ったでしょうがァ!」
「もうッ、秋ちゃんのケチんぼ!」
「うるせぃぞ、酔っ払い!だいたい、アンタはもっとちゃんと仕事しろッ!!」
「わー、秋ちゃんに怒られた〜」
「早く寝ろ!馬鹿!明日起きれなかったら、弟君にも会えないからな!」
「……それは嫌だ」
「そこだけ正気なるなよ!」
「秋ちゃんが一緒に寝てくれたら寝れるのになー」
「……人肌が欲しいならセフレでも呼べ。俺は御免だ」
「………わかったよ、忙しいのに呼び出して悪かったね。もう寝るから、帰って良いよ」
急にふてくされやがって。俺は呆気なくお役目解任ってか?
「……そんなに弟君に会うのが不安か?」
「不安?どうして?」
純の瞳が僅かに揺れた。
「……俺が気づかないとでも思ったか?」
純とは何かと長い付き合いだ。
「……そう言われちゃうと、返せないな〜」
そう言って笑った顔は、いつもの嫌味な顔じゃあなくて、クシャッと潰れてしまいそうな、奴の弱さを見せていた。
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