&‐アンド‐

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考えるよりも先に身体が動いて、ゲーチス目掛けてその拳をその顔に。



だが。






「!」





こんな非力な娘の拳など、さも赤子同然だと言わんばかりに片手で受け止めた。






「…くくっ」

「っ…!!!」

「ほら、どうしたんですか?力が全然入ってませんよ?」

「っ!」

「それで大層なことよく吼えていられましたねぇ!?あなたこそ何様ですか!!?」

「…す」

「はい?」

「殺して…やる……」

「やれるものならやってみなさい。ほら、リリィ?」






ゲーチスは顔を近づけ、耳元で囁く。




気持ち悪い。
耳障りだ。







「殺してやる!!!!」






ゲーチスに押さえつけられた、その拳は、ビクともしなくて。
私は非力だということにようやく気付いて。

弱い自分が悔しくて。
ゲーチスよりも、今、この瞬間にNを救えないことが悔しくて。





ゲームの世界なんてイベントはすぐに終わってしまう。





だから、今、今!
今やらなきゃいけないのに。








「…やめて」




消え入るような声で、Nは言う。




「ゲーチス、やめて」





Nは震える身体を無理やり起す。




「駄目だよ、ゲーチス」




何事も無かったかのように、Nは笑う。
それが癪に障ったのか、ゲーチスは徐に舌打ちをした。




「化物が…よくそんな状態で笑っていられるな―――気持ち悪い」





誰か。
お願い。
私はNを助けるためにここに来たんでしょ…?





ねぇ、神様。
答えてよ。






私のいる意味。
何も無かったなんていわせないよ。




奇跡なんて簡単に起せるじゃない。
私を2度救ってくれた神様なら。
何だってできるでしょう?
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