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「お兄ちゃん、ちょっと…」
とある本屋さんの前で、私は買い物帰りに兄と本屋によっていた。
兄がまじまじと黙読している本。
ピンク色だ。
そうとくれば、もちろんアレしかない―――
「おい、本屋でガチエロ本読みするの止めろよ!」
「大声で言うお前もお前だなッ!!!」
そんなやり取りをしていれば、無論周りの視線も大分集まるので。
兄はしぶしぶ(買うか買わないかの葛藤をしていたらしい)諦めて、外に出た。
ポーン…
「あれ、何の音?」
「ん?何にも聞こえないぞ?」
「…気のせいかな」
ポーン…
気のせいじゃない?
何だろう、この音。
どこから…聞こえてるんだろうか?
私は無意識のうちに、音のほうへと足を走らせていた。
「おいっ、リリィ!!!」
兄の声など目もくれず、私は惹かれるように走った。
走って、走って。
勿論回りの景色など見えていなくて―――
キキィッ!!!!
タイヤの擦れる摩擦音。
眩む視界。
見上げれば、太陽がまぶしく乱反射。
影になるトラックの正面。
混ざり混ざり合って、悲鳴。
それから衝突音。
そして、襲うのは激痛。
ぐらぐら血の香りにつられて。
ゆらゆら後悔に襲われて。
きっと死神が迎えに来る。
「死神だなんて、酷いなぁ」
意識は途絶える。