&‐アンド‐

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ゆっくりと、その扉を開ければ。
そこは―――





「…っ!!?」





玉座の裏側の隠し扉―――
まさかここに通じているとは思わなかったが。
それよりも、この光景。



多くのプラズマ団が地に伏して、目の前にはNとゲーチスの背中がある。
そして、その向こう側には。






「ヒサキさん!!!!!」






真っ赤な血を躍らせて、倒れ行く彼女の姿。
ドサリ、と音を立てて彼女は動かない。






「おや。なぜあなたがここにいるのですか?」





私の叫び声を聞いて、ゲーチスはゆっくりとこちらを振り向いた。






「何を…ヒサキさんに何をしたの!!!?」






ゲーチスは不適に笑い、そしてその顔を不気味なくらいに歪めた。





「殺しただけですよ?一部始終はとても面白かったですねぇ…全く使えない親友さん?」






ヒサキさんが倒れるそばに、放心状態のバル子さん。
どういうことだろう、か。
親友?なんでバル子さんがあんなに驚いて…?





「わた、わたし、は…」

「バル子さんっ…何が、あったんですか!!!?」

「違う、私じゃない…私じゃない…」

「…っ」




駄目だ。
ショックで何も聞こえてない。




「簡単さ。仲直りした二人だったけど、結果的に僕らからしてみればただの裏切り者。
ゲーチスが手を下したまでだよ」

「!?」




Nが淡々と言う。
つまり…バル子さんとヒサキさんのすれ違いが無くなった。
だけど、ゲーチスが許さなかった…。






「さぁ、リリィ!邪魔者は居なくなったよ!!!戴冠式の続きを始めようじゃないか!!!」

「だが断るっ!!!!」






お決まりの台詞を叫んでから、私は二人の横をすり抜けてバル子さんの前に立つ。






「親子二人で!!!!」

「!」

「王だの世界征服だの、くだらない事してないで…もっと向き合ってみたら?」

「何を…ほざいてる」

「お互いのこと!!!何も知らないじゃん、あなた達!!」

「「!!」」

「良く知らないけどさぁ!!!もっと話せばいいじゃん!何で、何でそうなったの!?」





Nの瞳が僅かに、揺れた。





「親子らしくしなよ!!!たとえ、例えそれが―――」







偽りの家族でもさ。








「うるさい」







Nが呟く。







「うるさいうるさい!!!!リリィは黙って僕のいう事聞けばいいんだよ?
そうすれば、何もかもが手に入る!!なんで、デメリットになり様なことしかしないんだ!?」

「…私には死んでも護らなきゃいけないものがある」

「何だって言うの?」





スッ、と私は指をさした。
Nに向かって。





「キミ」

「!!?」

「それと、この世界にいるみんな」

「護るって…!?何を大げさなことを!何も護れないじゃないか!軟弱な君じゃあね!」

「そうだね。私は弱いよ。
でもその弱さが―――決して君たちに劣るとは思わない」

「っ!」

「どれだけレベル上げしていようとも、廃人でも…気持ちで負けるわけが無い」






ばさり、とさっき拾ったアルバムを落とした。
Nはそれを見て、驚いた。





「何で、それを…」

「色あせてしまっているほど、古いアルバム。
だけど、だけど…ここには、小さいころのNの写真が一枚だけあった。」




たった一枚。
ゲーチスがとっておいた、唯一の思い出。
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