&‐アンド‐
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「"お部屋にお戻りを"」
N様を一瞬見たが、N様はすでに七賢人と名乗る男達と話をしていた。
まだ何か話が拗れているのだろうか。
***
「…ねぇ、バル子さん。彼の様子はどうなの?」
「"いまだ意識は戻らず。ですが、容態は以前より安定していますわ"」
「…」
私の一存で、彼をずっとこの部屋に置いてもらっている。
どうせこんな有り余っただだっ広い部屋、私だけじゃ使いこなせないし。
それに…。
「ゾロア、喋るなんて知らなかったー…」
「"ポケモン特有の、テレパシーというものですよ"」
「可愛いね。もふもふしてる」
ベッドに座っていたゾロアを抱きかかえる。
「んもー!!リリィ!!何言ってるの!?早く帰ろうよ!!!気味が悪いよこんなとこ!!!」
「え?誰のこと、言ってるの?」
「っ!!(やっぱ…リリィは記憶がまだ戻らない…一体どうすれば…)」
きゅーっと、抱きしめた。
なんだか懐かしくて。
愛おしくて。
大切な、何かであったような気がして。
「"…(しかし、N様は一体どういうおつもりなのだろうか。
記憶の断片元である少年と、ゾロアを一緒にエル様の傍に置くなんて…
本当に記憶が戻ってしまったら、どうするおつもりなのでしょう?
…あの香水の効果が弱いとはありえませんが)"」
「ねーゾロアー」
「"(『薄憶の葉』からとれた大変珍しい葉を液体にし、薄めるまでもなく原液そのものをあの球体の中につめた…
麻薬的なものと同じでしょう…実際意識を混濁させてしまうほどの強力な香りですもの…
あの時は、さすがの私も思わず一瞬意識が飛んでしまいましたよ…それなのに)"」
「君はどうして私のことを知っているの?」
「"(あのネックレス…四六時中つけるなんて正気の沙汰じゃありません。
完全に意識を消し去るおつもりなのでしょう…
だけど、それでは……本当の……エル様…いえ、彼女は…。
N様に好意を寄せていたのは、エル様ではなく紛れもない彼女の存在があった。
だとすれば…これは単なるN様のわがまま同然だ)"」
「ねぇ、バル子さん?」
「"…はい"」
ゾロアを上に掲げて、視線はバル子さんに向ける事無く呟いた。
「色で一番強い色って何だと思う?」
聞いてみた。
それは私の気まぐれに過ぎないけど。
「"さぁ…?私はそういう系統苦手でして……強いて言うなら黒でしょうか"」
「そうだね…黒はどんな色も塗りつぶしてしまう。黒より強い色なんて無いんじゃないかな…分かんないけど。
でもねバル子さん。あくまで私の推測にしか過ぎないけど…」
ゾロアを抱えて、視線をバル子さんへ。
「白は黒に勝るよ」
あくまで、私の考えだけどね。
と呟いく。
首元を撫でて、手を握り締めた。
意思の決意として。