&‐アンド‐

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なぜそこまで震えるのか分からなかった。
私は、何も、分からない。
分からないのだから、仕方がない。






「"面白い、と言うより滑稽です"」

「そう言わないでよ。バル」

「"おやおや、これは失言でした"」





スーツの女性は愉しそうに笑った。
それはそれは楽しそうに。





「さて。白き姫―――我が城にようこそ」





青年は私の前に跪くと、まるで王子様の様に左手を己の胸元へやる動作を見せた。
己が主人に忠誠を誓うような騎士のように。





「君の名前は…"エル"僕の横に立つ者には相応しい名前だ」

「"ABCの順で…LNM…の、L、ですか。至極単純です。それでいて、意味深ですね"」

「エル…これが、私の名前なの?」

「もちろん!エル、さぁ、こっちにおいで。服を着替えなきゃ」





青年の手を引っ張られる形で、私は立ち上がった。
不思議と体が軽い。
なぜだろう?



カシャンッ…





ベッドを出てくる際に何かが私の足元に落ちてきた。
それは、白い……白い…。




「これ、は…?」





携帯?







ズキッ







「うぅ…ああっ!!」







頭の痛さに、思わず頭を抱え込んでしゃがみ込んでしまった。



痛い痛い痛い痛い痛い!!!
何なの?この痛みッ…!!!





「…まだ完全じゃない、か」





ぼそり、青年は言う。





「エル、よく聞いて」




青年は私を同じようにしゃがみ込んで、耳元でささやいた。
そんな甘い声に、どこか酔いしれてしまう。





「君の名前はエル、だ。そして僕の名前はN。
痛いのが嫌なら何も考えちゃ駄目だよ。絶対、思考を停止させるな。僕のことだけ聞いていればいい。
これは王の僕である、絶対の命令だよ?」

「命令…絶対……N様の……」

「僕の命令は、"絶対"だ」





すぅ、と目の色が変わるのが自分でも分かった。
さっきまで熱かった身体は自然と冷たくなった。
冷静になれる。



私はN様のいう事を絶対聞く。



考えるな。




思考を進めろ。












「私の名前はエル。それ以上の何者でもない」








私は、遠い何処かで嘆いていた。
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