&‐アンド‐

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「…」





再び目を開いた時、そこは不慣れな景色だった。
寝起きのせいか視界がややぼやけてしまっている。




…ここはどこ?




あれ?私は…





ズキッ







「痛っ…」






思い出そうとすると、頭に痛みが走る。
なんでだ。何も分からない。
分からない、思い出せない。
一体ここは何処?






「…リリィ…?」





声が聞こえた。






ようやく視界がハッキリしてきた頃、そこはとても真っ白い部屋という事が分かった。
白をベースとした家具やカーテン。
私一人が寝るには大きすぎる。天蓋付きのキングサイズのベッド。


その隣に、黒いポケモンがいた。



…ポケモン?





あれ、私…この子を知ってる……?






「キャウン」





先ほど聞こえた声は幻聴だったのだろうか。
今はただ鳴いたようにしか聞こえなかった。





「キミ…何処から来たの……?」

「っ!!!」




そのポケモンは酷く驚いた表情を浮かべた。
悲しそうな。そんな表情に。


…。
お願い、そんな顔しないで。



何故だかわからないけど、私も悲しくなってしまうの。





「キャウウン…ウワォン!!」

「どうしたの?」

「…キュウゥ」




吠えたかと思えば、すぐに尻尾をたらしてまるで落ち込んでいるかのよう。


人間の言葉が…分かるのかな。




「おはよう」





ドアがゆっくり開けられた。
入ってきた人物は―――緑色の髪の長い少年だった。
それと、黒いスーツに身を包んだ女性。
顔は…仮面で隠してしまっている。
顔上半分を覆う形になっている。
舞踏会で貴族が付ける様なそれだった。




「誰…?」

「"少しばかり、記憶が飛びすぎですね"」




スーツの不思議な女性は、似合わないほどの可愛らしい声で言った。
少年は、いや少年と言うにも若すぎる…青年といったところか。
だけど少年というワードが似合う、そんな幼さを残していた。





「構わないさ。こちらの手中に入るのならば」





ニッ、と口端を吊り上げこちらを見つめる青年。
なにがそんなに面白いのだろう…。




「あとはレシラムがどう反応するかだよね…」

「"先に姫を慣れさせねば"」

「ああ、そうだね」



と言って、青年は私に近づいてきた。
ゆっくりと。





「やぁ、気分はどうだい?」

「……普通。って、見ず知らずな人にそんな事言ってどうするんだよ」





思わずノリツッコミ。
なんだろう、大人しくしてるよりこっちの方が性に合う。




「…」

「"驚きました"」





スーツの女性は手を口に当てる動作をする。





「"消す、と言っても結局内なる本能は完全に消せはしない……どうでしょう?N様。
高貴な姫…という訳には行きませんが、じゃじゃ馬のほうがより面白くないですか?"」

「…そうだね。まぁ、一からやり直しって訳じゃないしさ」





隣にいたポケモンは、ガクガクと震えていた。
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