&‐アンド‐
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「さて」
アーティは立ち上がる。
「何処行くの?」
「リリィちゃんを探さないと。殆ど僕のせいだからね…」
「…おれも行くよ」
「君はジムに戻ってないと―――」
「リリィはおれが守るんだ」
「…そうだね」
ゾロアは口をへの字に曲げて、言った。
***
それからは二人で広い街をぐるぐると回っていたが。
一向に見つかる気配がしない。
「いない、ねぇ…」
「…!」
ゾロアが突然顔を上げる。
ひく、と鼻を動かし顔を顰める。
「…(燃える、匂い?)」
「んうん?どうかした?」
「……あっち」
す、と指を指した先には黒い煙が立ち込めていた。
アーティはハッとして、ゾロアを突然抱っこして走り出した。
「うほぉっ!!?」
「怪我人が出てるかもしれない。それに、リリィちゃんが近くにいたら…」
「そうだね」
人混みを書き分けて、ようやく辿り着いた頃には。
「……」
「ちょっと遅かったね」
そこは、燃えつきた屋台が倒れているだけだった。
もう一度ゾロアが鼻を動かす。
「…(リリィの匂いが微かに…入れ違い?)」
「あうう……一体これは…」
「下ろして」
「あ、そうだね」
ゾロアが地面に脚をついたと同時に、走り出した。
「あ!!ちょっと!!!」
人間の身体のままだと、正直走りにくい。
着物はばっさばさするし…とゾロアは呟いたと同時に、脚が空を蹴った。
上を見上げると、アーティではない別の誰かがゾロアの襟を掴んで持ち上げていた。
「お前…白い嬢ちゃんとアーティの野郎と一緒にいた奴だな?」
タチの悪そうなおじさんが、ゾロアを掴んでいた。
全然分けが分からなくて「はぁ?」と言いそうになる。
「俺の仕事を邪魔するから…お前を人質にでも取って、子分共を取り返すとするか」
「君、何?」
と、澄んだ声がした。
ゾロアは一瞬リリィかと思ったが、それは違った。
アーティが珍しく怒った表情で、ハハコモリを出していた。
「その子、放してくれないかな?」
「おーおーヒーロ気取りですかお前は」
「別に。僕は何も気取ってないよ。僕は僕のままでいるだけさ」
「カッコい事言ってくれちゃって…」
気がつけば、人は捌けていた。
この空気に耐えられなかったのか、コソコソと逃げていく者や隠れてみている野次もいる。
「お前ら」
「「「うっす!!」」」
男がくいっ、と顎を動かすとハゲた坊主たちがアーティを後ろから取り押さえる。
さすがに、数人の力には耐えられなかったのか。
「あーあー…」
「ハハコモリ!きりさく!!」
「ハハン!!」
「させるか!!」
と、ゾロアを持つ男が繰り出したのは―――
「エンブオー、ほのおのうず!!」
よりにもよって、相性の悪いポケモンだった。