上司も苦労します。

□第7話
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***





「―――以上のことから、感染症には症状が異なることが多いです」




保科大学、獣医学。
視察をする上で学生と言う立場からは厳しいから、こうして臨時講師を努めている。
教師には教師の深い関係があるようだ。
人間はいつの時代も貪欲で変わらない。



今日最後の授業を終えて、教員室に戻ろうとする。


中庭で、不意に生徒に声をかけられた。


余談だが、動物の扱いに長けているせいか、庭も広いし自然が多い。
ここいらではかなり大きな大学だ。




「夜鈴先生、今日の授業すっごく良かったです!!」





にこやかに、男子生徒は告げる。




「何でも知ってて…博識ですよね
臨時講師なんかじゃなくて、いっそのこと教授にでもなってしまったらどうですか?」

「はは…これ以上、隈は増やしたくないかな」




嘘は言ってない。
教授なんてまずなれるわけがないし、そもそも私は地獄の鬼。
現世にはあくまでも視察だ。
遊びにきているわけではないんだ。




「…夜鈴先生、少しよろしいですか?」

「はい。それじゃ、勉強頑張って」




男子生徒に微笑んで、後ろを振り返った。
そこには先生が二人。
一人はここの教授で、もう一人は―――




「新しく赴任してきました、加々知君です。
新任同士で…彼に学校の事を教えて上げてください」

「加々知です。よろしくお願いします」




人間、一人は殺っている目。
明らかにカタギの人間ではない顔。
でもって髪は朝のニュースのイケメンアナウンサー風な爽やかなカット。







そんな鬼灯様に激似の人がいた。





「…よ、よろしく」

「じゃあ後は若い者同士に任せたよ!」




教授はさっさと消えていく。
だが私は加々知と名乗るこの人を凝視したままだった。




「夜鈴さん、私ですよ。鬼灯です」

「やっぱりか!!!?」




こそこそと話ながら、鬼灯様は続ける。




「私もこちらを視察するよう、派遣されました。
どうやらここ、かなりの亡者がいるようで…」

「そうか。…とか言って、動物に触れ合いたいから来たんじゃ…」

「…」

「図星か!」




でも鬼灯様の言うとおり、ここは亡者の数が多い。
私一人では回しきれないかと思っていたが。


鬼灯様がいてくれれば、安心出来る。





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