20万Hit企画

□彼氏の特権
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―――そして来る土曜日。



現在時刻9時。






「エンデヴァー絶対殺すマン」






心操君と待ち合わせの場所で、私はベンチで腰かけながら奴の怨念を吐き出していた。
理由はなんとなくお察しいただけるだろうが、聞いてほしい。
土曜日にお暇いただきますとハッキリあのエンデヴァーさんに面と向かって言い切ったのだが、勿論断られた。
それに私は労働基準法うんぬんかんぬんについて反撃を返したのだが、鶴の一声で一蹴されたのだ。
高校生のやることじゃないのでは?と半ばキレ気味で言えば、そこからはエンデヴァーさんとの口論。
お互い個性を使ってドンパチやり始めるわで事務所はもうひっちゃかめっちゃか。
そんな中飛び込んできた事件にそのままエンデヴァーさんに引っ張り出され、それが片付けば事務所を綺麗に戻せば休みと取ってよしとのことで。
それが終わったのが明け方の4時。
3時間の仮眠をとって、急いで身支度をしてここまでやってきた。
もう一度言う。




「エンデヴァー絶対コロス」




沸々と煮えたぎる怒りが収まらないのだが、せっかく心操君が計画してくれたこのデートを台無しにするわけにはいかない。




「…デート、か」



ベンチに座りながら、足をぶらぶらと揺らす。





「そっか、デートか」





なんだか少しむずかゆくて、口元がついつい綻んでしまう。





「柳崎さん…!?え、俺遅刻した…!!?」




と、焦る声が聞こえてきたので顔を上げれば私服姿の心操君がいた。
いつも制服しか見てなかったからちょっぴり新鮮だった。




「いいえ?私が早く来すぎちゃったんです」

「ごめん、待たせちゃったな…」

「だってまだ9時ですよ?集合時間10時じゃないですか。心操君こそ、一時間前から待ってるつもりだったんですか?」

「っ…家にいても、落ち着かなくてさ」

「!」

「すっげぇ…楽しみだったし。柳崎さんとのデート」

「…それ、やめませんか?」

「え?」

「名前で呼んでください」

「!」

「デートなんですよね?だったら、ちゃんと、名前で、私の事、呼んで?」

「っ!!」




心操君はぼっ、と火が付きそうなほど顔を赤く染め上げそれから目線をあっちこっちに泳がせた後、照れながら言う。




「…由紀」

「はいっ、人使君!」




人使君が私に手を差し出してくれたので、私は素直にそれを握り返した。





「いきましょう!」






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