20万Hit企画
□彼氏の特権
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ある時、心操君が嬉々として私に話しかけてきた。
月曜日。
「柳崎さん、今週の土曜日って空いてる?」
「その日エンデヴァーさんから差し押さえられてて…多分この前のヴィランを捕まえに行く日です…」
またある時は火曜日。
「今週だめなら来週の日曜日は空いてる?」
「あー、アニマルセラピーの日です…ごめんなさい!」
そしてまたある時は水曜日。
「祝日は…」
「お仕事です!」
心操君もめげずに木曜日。
「いつ休みなんだ…?」
「えーっと…エンデヴァーさんからこじつけられた仕事が多数で…ごめんなさい」
さらにさらに金曜日。
「…柳崎さんって俺と同じ学生だよな?」
「うう、ごめんなさい…アシスタントヒーローなので…ヒーローが駆け付けるなら私も行かなきゃいけないので…」
「そっか…」
心操君はしょんぼりと、項垂れる。
表情こそ露わにしてないけれど、今週尽く心操君のお誘いをお断りしているのも事実。
かといって仕事を蔑ろにするわけにはいかない。
「…来週の土曜日なら、一日お休みとれるかもです。どこか連れてってくれますか?」
「!」
その言葉を聞いて、心操君は晴れたような表情を浮かべる。
基本仏頂面の心操君だが、時たま見せるデレに思わずきゅんきゅんしてしまう。
心操君、可愛い。
「じゃあっ!!」
心操君はぎゅっと私の両手を握ると、彼の普段から到底想像もつかないような笑顔を浮かべた。
「動物園に行こう!」
動物園?と首を傾げていれば、心操君はポケットから2枚のチケットを取り出した。
「貰いモンだけどさ…いつも柳崎さんが忙しそうだから、なんかたまには気分転換にでもなんねーかなって」
「…」
「あ、もしかして動物嫌い?」
ぽかーんと呆ける私に対して、心操君は私が嫌だと勘違いしているようで、気まずそうな表情を浮かべていた。
けれど、勿論嫌なわけがなく。
私は思わず吹き出してしまった。
「ぷっ…あははははは!!」
「!?」
「わ、私が動物嫌いなわけないじゃないですか!っていうかフェンリルが動物園行くって逆に面白すぎる…!!!」
「あっ!?そ、そうか…あんまり気分よくないか…?」
「いいえ!心操君からのお誘いとっても嬉しいです!今からとっても楽しみです!!」
私は心操君の手をぎゅっと握り返せば、彼は林檎の様に頬を赤く染めた。
「…俺も、楽しみにしてる」
私はニコリと笑みを返して、私はその場を後にした。
「え、ちょっと!上鳴、口からジュース零れてる!!」
「なぁ…知ってるか…?耳郎、あいつらあれで付き合ってんだぜ…」
「知ってるけど、何?」
「今時の高校生の付き合い方か!!?ピュアかよ!!!小学生かよ!!!」
「あーはいはい。羨ましいのねアンタ」
「羨ましくなんか…ないっ!!!」
「わかったわかった」
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