20万Hit企画

□SOS!
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「おとおさあああん!!!おかあさあああん!!!」




屋上につくなり、子供は急に喚き泣き出した。
ここにきてようやく事態を把握したということか。




「うるせぇ!!!黙れっつってんだろ!!」




抱えていた子供を地面に思いっきり叩きつけようとしたので―――




「大人げない!!」



額部分を竜化させて、全力でヴィランに頭突きをかました。
ぐらり、とヴィランはよろけ、子供を離した。
子供は尻餅をつくなり、すぐに私の元まで走ってきた。
うん、状況把握ができるいい子だね。




「てめぇ…さっきからよォ…俺の邪魔ばっかしやがって…!!」





ぎらり、と全身の針を震わせる。
ハリネズミみたいだと思ったけれど、可愛くないから絶対口にしないと思った。




「オラァ!!!」

「っ!!」



ヴィランは体の針を引き抜くと、私の足元に突き刺した。




「いっ…つうぅ…!!!」




地面と足が太い針によって打ち付けられる。
右足から血が溢れ出る。




「ああもうなんでかな…!!今年足に厄災でもついてるのかねぇ……!!!」




冷や汗がぶわっと溢れ出る。


痛い。




それでも子供がいる手前、泣き叫ぶわけにはいかない。
歯を食いしばって無理やり口角を持ち上げた。
唇が震える。膝を折って蹲りたい衝動に駆られるが、必死にそれを耐える。





「おうおうやっと大人しくなりやがって…」

「おねえちゃああああん!!!!」





私の怪我を心配してくれてるのか、子供は、女の子は一層泣きわめいた。
大丈夫、と連呼するも私の取り繕った表情は剥がれ落ち始める。




「大人しくならねぇ悪い子は…」

「やだああああああああ!!!!」



ヴィランは女の子の腕を掴むと、引きずって屋上の端まで歩いていく。



私は瞬時に最悪の未来を想像してしまう。




「やめろ、ヴィラン!!!」





走ろうにも、足に針が撃ち込まれているため、身動きが取れない。





「どーうしよっかなー」

「いやあああああ!!!」





女の子を掴み上げ、空中で宙ぶらりんの状態にさせている。
腕を左右に振って女の子はゆらゆらと激しく揺れる。
あいつは…何を…っ!!!




「そうだ、俺をここから逃してくれるようヒーローに手配してくれりゃあ子供を離してやるよ」

「っ、わかった!分かったから!!」






ヴィランはにやり、と不気味に笑みを零す。





































「おっといけねぇ、手が滑っちまった」


























子供は、重力に従って落下した。


























最悪な、想像が、現実に、なって―――


















「お前も落下死しろ」



























―――そこからは、早かった。

子供が私の視線から消えた瞬間に、針を強引に引き抜き、足に100%竜化の力を解放させ、床が抉れるほど強く蹴り飛ばす。
女の子の元へ向かう途中で、ヴィランを力の限り殴り飛ばし、屋上から私諸共空中ダイビングした。


私は落下するヴィランを足場にし、全力で踏み台として使った。



女の子目がけ、手を伸ばす。





「っ―――!!」




地面まであと僅か。
翼を広げ、さらにスピードを上げる。





「つかまえ、たっ!!」




女の子をぎゅっと抱きしめ、くるりと背中を地面に向けた。
少しでもこの子に衝撃がいかないようにするためだ。
翼を羽ばたかせ、少しでも重力に逆らおうとしたが。




「っだあ!!!」



間に合わずに、背中から地面へと落下した。
多少は翼で緩和させたにしろ、全身を強打した。
背中がビリビリと痺れ、激しい痛みに襲われる。




「はっ…はっ…」




肺にまで影響を及ぼしたか、息が上手くできない。



「お、おねえちゃん…だ、だいじょ…」




腕の中で女の子が泣きそうな顔で私を見てる。
だから私は心配させまいと、彼女の頭を震える手で撫でてやった。
正直、腕を動かすのもやっとのくらいだ。




「柳崎!無事…じゃねぇな…っクソッ!!」




相澤先生が視界に写る。



あ…先生、凄い必死な顔してる…。



遠くからサイレンの音が聞こえ、辺りが騒がしくなってきた。
それに従って私の意識も遠くなる。


ただ、女の子の泣いている声が聞こえたから、私はもう一度頭を撫でようと手を持ち上げた。
持ち上げたけど、それは叶わずに、ぱたりと落ちた。









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