20万Hit企画

□SOS!
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「サバ缶と…レトルトカレーと…」





時刻は正午を回ったところ。
今日は日曜日で、ちょっと早いけど夕飯の買い出しに近所のスーパーに買い出しに来ている。
チラシも入っていたし、お買い得商品をゲットすべく、買い物かご片手に店内を回っていた。





「あれっ、由紀ちゃん?」





名前を呼ばれ、私は商品棚から視線を声のした方に向けた。
そこには。




「お茶子ちゃんに梅雨ちゃん!二人はお買い物?」

「うん!さっきそこで梅雨ちゃんと会ってね…」

「由紀ちゃんはお昼でも?」

「ちょっと早めの夕飯をねー」

「って、レトルト食品ばっかりじゃない…体に悪いわよ」

「うっ…し、しかし…料理は凶器になってですね…」




梅雨ちゃんに痛いところを突かれ、つい目線を泳がせる。



「簡単なものから作ってみましょ。今度よければ教えてあげるわ」

「ホント!?梅雨ちゃんありがと〜〜!!」

「あ、私も私もー!料理にはちょっと自信あるんだー!!」

「お茶子ちゃんも…!!」






なんていい友達なんだ…!!
思わず涙目になりながら、残りの買い物は三人で楽しんだ。
各々食材を買い込み、スーパーを出た所で、




「あ、そうだ。さっきの料理の件だけど、いつでもウェルカムだから!」

「え?でも家族の人とか…」

「私一人だから問題ないよ!」

「え?…あっ、ご、ごめんっ!!」




お茶子ちゃんは咄嗟に察し、すぐさま訂正した。
だけど私は笑顔のままで「ありがとう」と告げる。
本当にいい友達を持てた。

私は、幸せもんだな。






「お前ら…」





ほのぼのとしていたら、上から声が降ってきた。
今度は誰だろうと思っていたら。



「あ、相澤先生!?」

「お前らもここのスーパー使ってんのか」

「先生こそお買い物ですか?何を買ったんで………」




先生は片方の手をポケットに突っ込み、もう片方の手はビニール袋を持っていたので覗きこむと。




「ね、猫缶…!!!」

「うるせぇ。さっさと家に帰れ」

「ここのスーパーの向かいってペットショップだったわね」

「確かに」




梅雨ちゃんが指摘する。
相澤先生は嫌なところを見られた、とでも言わんばかりに顔をしかめた。




「最近できたんですよねー、ここ。一回はいろんな動物がいて…二階は確かペットの餌とかすごい種類豊富だとか」

「相澤先生、猫飼ってるのかしら」

「飼ってねぇよ。いいから帰れ」

「先生もしかして猫好きだったり?まさか?いがーい!!」

「柳崎…お前…俺との補習終わってないの忘れてねぇだろうな…」




相澤先生が鬼のような形相を浮かべていたので、思わずお茶子ちゃんの後ろに隠れる。




「私も昔猫飼ってて―――」



昔話に花を咲かせようか、と思った次の瞬間。












「きゃあああああああああああ!!!!!」









まさに、今。
向かいのペットショップからつんざく様な女性の悲鳴が響き渡った。
私は瞬時に視覚・聴覚を竜化させて情報を集める。




「…強盗!」

「っ、柳崎!?」



店内はガラス張りだが、全てを外から把握することは出来ない。
それ故に相澤先生は僅かに動作に遅れ、私が先に店へと突っ込んだ。


見えたものは、全身針金のような男がレジから金を奪い、女性店員に向け針塗れの腕をまさに振りかぶろうとしている。




「馬鹿!!!動くな、柳崎っ!!!」






学生だからだとか、相澤先生に今の現状を伝えるとか、そんな"建前"なんて気にしてたら、






誰一人救えはしない!!!






「離れろおおおおおおおおお!!!」





両腕、両足を竜化させ、ドアを突き破って店に突っ込んだ。


















SOS!





















「っ、うぐあっ!!?」




鋼鉄の鱗は針を折り、そのまま男の顔面に吸い込まれ店の奥へ吹っ飛ばした。
店内にいた動物が激しく喚く。




「大丈夫ですか!?」

「あ、ありがとう…」




尻餅をついている女性に手を差し伸べて、すぐに店から避難するように促す。
店内には見たところ人はいない。
男が女性を襲っている間に逃げたのだろう。




「いってぇ…クソガキ!!何しやがる!!!」

「っ…!」



一歩、足が後ろに下がってしまう。
何を怖気づく必要があるってんだ!
私は死柄木とも対峙した…こんなヴィランなんてなんでもない!!




































「ふえぇ……おかあさーん、おとうさーん…」








ぐっと、息を呑んだ。




子供がまだ残って――――!!!





「お先にイィ!!!!」

「やめろっ!!!」



ヴィランと一瞬視線が交差したかと思えば、ニヤリと笑うと子供の元へ走り、最悪なことに人質に取った。



「おっと、近づくなよ…このガキがどうなってもいいのか…!?」

「っ…」

「そのまま座れ、手を後ろに組め」

「…」



私はヴィランに言われた通り、床に膝をつき手を後ろで組んだ。
ヴィランは店内にあったであろう、ペット用のリードを使って何重にも私の腕を拘束した。



「ヴィラン!大人しくしろ!!」




しかし、すぐさま相澤先生が捕縛武器を構え、店内に踏み込んできた。




「おっとぉ?プロヒーローか?なら丁度いい。お前も来い!!」

「いっ!?」




ヴィランは私の首根っこをつかむと、子供を抱えたまま店内の奥へ進んでいく。




「これ以上近づいてでも見ろ…!!こいつらを屋上から突き落としてやる…!!」

「柳崎…あれほどっ…!!」





相澤先生が深く眉間に皺を寄せる。
これはアカンやつだ。
後でめちゃくちゃ怒られる奴だ。
元はと言えば自分で蒔いた種。自分でどうにかしよう。




「先生!」

「!」

「私の事は放って置いてください。多分、すぐ終わりますから!」

「お前…後で覚えておけよ…!!」

「ンンッ!怒ってらっしゃる!!」





黙れ、とヴィランに一喝され、私は大人しく子供と共に屋上へ連れていかれた。





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