20万Hit企画

□理想のWedding
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私は梅雨ちゃんと共に部屋を飛び出した。
ドレスを着替える間もなく、走りづらいのは致し方ないがとにかく逃げるのが優先だ。
こんな場所で戦闘なんて、ありえない!
幸せに満ちるこの空間でそんなこと絶対にしたくない。
ここでは数多くの幸せな夫婦が残していった思い出の場所でもあるんだ。
ヴィランが安易に足を踏み込んで良い場所ではない。



「梅雨ちゃん、ヴィランは何人?相澤先生は誰に攫われたの!?」

「しっ!あんまり大声出さないほうがいいわ。
それに、個性は使わないほうがいいわよ。
そのドレス、高かったんでしょう?」

「うっ…給料数か月分です…」

「ね?静かに私についてきてちょうだい」

「まずは身の安全確保から、だね」




口ではそういったものの、声が少しばかり震えてる。
まさかあの相澤先生が攫われるなんて…。
ヴィランはどこから侵入したんだろう。
一体何の目的があって…。
相澤先生自体に何か恨みでもあるのか?





「っ…」





心配のあまり、ぐっと唇を噛みしめる。
それに目ざとく気づいた梅雨ちゃんはピタリと足を止めてこちらに振り返った。




「心配するのも分かるわ。でも、きっと相澤先生は大丈夫。だって強いもの」

「…うん」

「あなたが怪我をしたって聞く方がきっと相澤先生は悲しんでしまうわ」

「…うん」



梅雨ちゃんに頬をぺちぺちと叩かれて、私は深く深呼吸した。
凹んでちゃだめだ。そういう気持ちこそ、こういう場面では緊急時の対応を鈍らせる。
いつもの、ヒーローとしての私であれ。




「よしっ!もう大丈夫!!行こう!」




気合を入れ直して、再び私達は足を進めた。




内々での結婚式の予定だったから元々この式場もそんなに広くない。
ただ、ここはガーデンウエディングにも力を入れており、庭はすごく綺麗に整備されている。
色とりどりの綺麗な花や、海をバックに誓いの言葉、なんてとてもロマンチックな仕様となっている。



今となっては関係ないが。



梅雨ちゃんは私の手を引いていくと、ある扉の前で止まった。




「相澤先生はこの先に連れていかれたわ。何が起こるか分からないから、気を引き締めましょう」

「了解…!」




緊張感が漂う中、梅雨ちゃんは扉に手をかけ、重そうな扉を一気に引いた。



私は瞬時に対応できるよう、体制を構えた。




しかし。




「――――!!」






私の目に飛び込んできたのは、全く予想しえなかった事実だった。








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