20万Hit企画
□飴色I
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「とーちゃくっ」
「わっ」
心操くんはぐいっと私の身体を抱えて、ソファに放り投げた。
その雑さに物申してやろうかと思ったけど、テレビを勝手につけたかと思えばキッチンへに向かっていた。
「ネギ類だめだったよな」
「え?」
「好きな物は?」
「肉」
「…だろうとは思ったよ」
そんなに肉食系女子に見えるのだろうか。
…。
いやどっからどうみても肉食系女子じゃないですかやだー!!!
(※個性:フェンリル)
心操君は冷蔵庫から適当に食材を取り出して、調理を始めた。
「ご飯作ってくれるですか!」
ぴんっと耳が二つ立って、野菜を切る音を拾った。
「男の作る料理だぞ。俺だっておまえより上手くねぇし…ただの野菜炒めだ。
……期待すんなよ」
「お肉大目でお願いします!」
「別に体に悪いわけじゃねーだろ、野菜」
「本物の犬とは違いますから平気ですけど…なんか胃がむかむかするというか…食べれますけど…」
「お腹ポッチャリしたフェンリルとかやばすぎだから。肉食いすぎ厳禁な」
「そんな殺生な!」
確か食材はそんなに無かった気がする。
今日の様にヴィランの襲撃に備えてあまり食材は買い込まないようにしてある。
1日で終わる時もあれば徹夜で2日、3日なんて当たり前だ。
そうすると食材が勿体なくなってしまう。
本当にありあわせのものだになってしまうけど、心操くんがわざわざ手料理を作ってくれるのだ。
三ツ星レストランより、最高の料理に決まってるじゃないか。
文句なんてあるわけない。
「…」
心操君が真剣に料理する姿を横目に、私は意識をテレビへと向けた。
NHAのニュースでは私が先ほど捕獲したヴィランの速報が入っている。
全く、エンデヴァーさんも人使いがあらすぎる。
「…あれ?そういえば心操君、さっきも言ってましたけど、お昼にも来たってことは何か用事が…?」
「…」
顔をキッチンの方に向ければ、心操君はフライパンに火を通しているところ。
視線を私の方に向けると、少し照れながら言う。
「お前が合鍵寄越したんだろーが。
それともなんだ?彼氏でも理由なく彼女に会いに行っちゃいけねぇのか?」
「っ…!!」
「言わせんな、バカ」
「ししし心操君、そんなそんなっ…こ、こっちまで恥ずかしくなっちゃうじゃないですかっ!!」
「いいから大人しくテレビ見てろ!」
お互いが顔を真っ赤にさせながら視線を外した。
急にあんなこと言うんだもの。びっくりしたじゃないか。
ソファにあったクッションを掴むと、私は真っ赤な顔を隠す様にクッションに顔をうずめた。
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