20万Hit企画

□飴色I
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疲労。
疲労、疲労疲労疲労。



…疲労。


現在時刻、PM8時。




冒頭から何を言ってんだと思っているかもしれないが、私は今、死ぬほど疲れている。


金曜日に立てこもり事件が市街地で発生し、なぜか私もエンデヴァーさんに尻を叩かれ現場に引っ張り出されたのだ。
勿論授業途中の出来事だったから、学校は早退。
エンデヴァーさん曰く、犯人が逃走した場合の最終措置。
万が一に備えて速やかに犯人確保に出れるのがこの私だったから、ということらしい。
しかし犯人もなかなか強情で、立てこもった時間はおよそ48時間と半日。
まるまる二日もこもりやがって、その間十分な睡眠も食事もとれずにこの有様だ。
どんな有様かだって?
帰宅直後に玄関に頭から床にダイビングした状態。
犯人は無事に確保して、誰一人としてけが人が出なかったのは不幸中の幸い。

仕事中は一瞬の気の緩みも許されない。
その一瞬で生と死を分かつかもしれないからだ。





「お腹すいたなぁ…」





動くのが面倒だ。
このまま寝てしまってもいいくらいだが、間違いなく身体を痛める。
ぐるる、と胃が栄養を求め唸り声をあげる。
うるさい、こちとら満身創痍なんだ。ぐるる。
対抗するように喉を鳴らしてみるが、何の意味もない。




「神は存在しえないのか…」




神様にご飯からお風呂まで全部やってもらいたいのだが、生憎そんな神様なんているわけもなく。





ガチャ




「お、開いてる」





いっその事寝てしまおうか、だなんて思考回路を断ち切ろうとしたとき。
ノックもなしに誰かがドアを開けたのだ。




「柳崎さん、お前なんで玄関に寝てんだよ…」

「こ、これはまさか天の助けですか…!?」

「?」



入ってきた人物は心操君だった。
特に約束もしていなかったのだが、何かしら彼の方が私に用事があったのかもしれない。
どちらにせよ、今この場に来てくれたことは大変ありがたい。



「心操君、大変です。緊急事態なんです」

「緊急事態?どうした、まさか病気とか―――」










「お腹が大変すいているのでございます」








「…」





…パタン





「ああっ!!待つのです!!待ってください心操君!!!!
お腹が!!!すいて!!!力が!!!出ない!!!!」

「そんだけ騒ぐ力があるなら問題ねーだろ!」





心操君は一度出ていったかと思ったが、すぐに戻ってきて鋭いツッコミをしてきた。
私は床に伏した状態だったので、心操君の顔を見れないが(見ようとしない)
心操君は呆れた声で、続けた。





「どーせアシスタント活動だろ。だろうと思ったよ。日曜なのに昼間いっても家にいねーし、連絡つかねぇから仕事してんだろうとは思ったけど…」

「神よ!慈悲を!御恵みを!!!」

「はいはい、ほらせめてリビングまでガンバレ」

「うぅ〜…」




心操君は玄関に上がり、私の両手を持つと、ずるずるとリビングまで引きずって行った。
これがフェンリルの姿だったら、廊下をお掃除して毛並みがとんでもないことになっていたなぁ。





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