20万Hit企画

□聖少女の脈動
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「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサーの対策も頭にあるヴィランだ。
電波系の個性が妨害している可能性もある。上鳴、お前も個性で連絡試せ!」

「っス!」




相澤は私から視線を逸らすと、素早くこの緊急時の対応を取った。
一応私もここの教師なのに何もしなくていいとは、そこまで信頼されていないのかぁ。残念ねぇ。





「それから柳崎…あんまり楽しそうにするな」

「えっ、私?」

「いい加減猫被るのは止めろ。生徒に万が一何かあったら、ただじゃおかねぇぞ」

「待ってください!相澤先生一人で戦うんですか!?」




今にも飛び出そうとした相澤を、緑谷は止めた。




「あの数じゃいくら個性を消しても、イレイザーヘッドの戦闘スタイルは、敵の個性を消してからの捕縛だ!
正面突破は………」

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

「!」

「13号、生徒とそこの馬鹿を頼むぞ!」




そう叫んで、相澤は敵が湧いて出る敵陣に突っ込んでいった。
まさか去り際に言った"馬鹿"とは私の事か?
ふむ、確かにそうかもしれん。
あんまり普通にニコニコしているものだからそろそろ鳥肌が止まらなくなってきた。
慣れないことはするもんじゃあない。




「皆さん、入口へ速やかに逃げてください!」

「させませんよ」





―――と、逃げる私たちの目の前に黒い霧が、ヴィランが現れた。
先ほどこのヴィランから何十人ものヴィランが出てくるのが見えた。
恐らく、いやこいつの個性はワープだろう。
厄介そうな奴がヴィランにいたもんだな。





「初めまして、我々はヴィラン連合。せんえつながら…この度にヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたのは…
平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」






目的はオールマイトの殺害。
平和の象徴を殺してヴィラン達が住みやすい街づくりでも目指しているのか?
悪の象徴であったこの私が死んでから、随分とまぁ勝手に暴れられているものだ。




「予定ではここにオールマイトがいるはずですが…何か手違いがあったのでしょうか。
それにまさか本物の"異才児"を見れるとは思いませんでした」



ヴィランは私に視線を向ける。
まさか私ご指名で来るとは思ってもいなかったので、ついつい猫の皮を被ったまま反射的に返事をした。




「おじちゃん、だあれ?」

「おじっ…!?」




クラスがざわついた。
普段の授業では欠片も見ないような愛くるしいその姿に笑いを堪えているのだろうか。
"おじちゃん"と呼ばれたヴィランも顔を引き攣らせていた(といっても霧状なのでイマイチ表情が分かりにくいが)





「巷ではあの"緋色の悪魔"と同じ個性を持っていると聞きましたが…ただの幼子ですか」

「やだー13号、このおじちゃん怖いよー(棒)」

「由紀ちゃんは下がっててください!麗日さん、由紀ちゃんをお願いします!」

「うぇっ!?私っ!!?」

「麗日、だっこしてー」

「あ、あわあわ、せせせせ先生を抱っこしたら私殺されんじゃ…」

「見えないからさっさと抱っこしろって言っているんだよ」

「ヒイイ!!!ごめんなさいっ!!!」




チッと舌打ちをすれば、麗日は慌てて私を抱えた。
目線が先ほどよりも高くなったので、すんなりと状況が把握しやすくなる。
生徒たちの足元にいるだけじゃあ、彼らがどんな行動をとるか分からな―――





あ。




「爆豪、切島!!待て!!!」

「っるせぇ!!先制攻撃だダァホ!!!」

「俺達にやられるってことくらい考えてなかったのか!」

「待てと言っているのにあのバカ共が…!!!」




私の制止を無視して二人が攻撃をしかけるも―――





「危ない危ない…そう…生徒と言えど優秀な金の卵」

「だめだ!どきなさい二人とも!!」




13号が叫ぶのも既に手遅れ。
ヴィランは霧状の全身を大きく広げ、私達を闇に飲み込んだ。
その際に麗日にぎゅっと抱きしめられて、庇われる形と成る。




「…いい子だ、麗日」

「柳崎、先生…?」

「しっかり持っててくれよ。この体だとすぐに飛ばされかねん」

「はいっ!!」




ようやく猫の皮を捨てたことで先ほどまでビクビクしていた麗日が本調子に戻る。
そこまで嫌だったのか…?ゲス顔少女が好みだっていうのだろうか…まさかな…。



だが、ものすごいスピードで私と麗日は誰かによって霧の中を離脱する。




「飯田君、ありがとう!」

「全員は助けられなかった…!!」




しばらくして、霧が晴れると先ほどまでいた数人がこの場から忽然を姿を消した。
…飛ばされたか。

幸いな事にもこちら側にはまだ13号がいる。
他の生徒が少しばかり動揺しているが、13号が指示を出していた。
飯田に連絡を任せるとのことで、確かに彼の個性ならば一目散に先生の元へ駆けつけられるだろう。
私としてもこの状況にメリットはない。
なら飯田に協力してやるのが筋ってもんだ。




「敵前で策を語る阿呆がいますか」

「バレても問題ないから語ったんでしょう!」





13号は個性を使って、霧を吸い込む。
しかし先ほどからのこのヴィランの余裕。
それにワープという個性…。
私達をどこかに飛ばすしかないというところと、あまり攻撃には向いて―――




「13号!今すぐ個性を止めろ!!!」

「!」

「もう遅い!13号、災害救助で活躍するヒーロー…やはり戦闘経験は一般ヒーローに比べ、半歩劣る。
自分で自分をチリにしてしまった」




ヴィランは13号の背後にワープゲートを作り出し、正面からの攻撃を背後に回したか。
13号の背中が自身の個性によってチリと化す。




「飯田ァ走れって!!!」

「くそう!!」

「散らしもらした子供…教師たちを呼ばれてはこちらもたいへんですので」




ヴィランは飯田を飲み込まんと、襲い掛かった。






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