ダイビング!

□vol.24
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「柳崎、ちょっといいか」




久しぶりに学校に登校し、下駄箱で靴を履き替えている所で声をかけられた。
相澤先生は今日も変わらずの様子で、気怠そうに私の名を呼んだ。
たったそれだけのことなのだけれど。
少し、胸がどきりと高鳴った。




「はい、なんでしょう」




相澤先生は私を一瞥すると、そのまま無言で歩き出した。
つまりは、




「"黙ってついてこい"、ですか…」




私も大分相澤先生がどういう人であるか理解してきた。
先生が何を言わんとしているのかも、口を交わさなくとも動作でなんとなく察せる。
私は黙って、やや猫背気味な背中の後をついていった。
















vol.24 先生は魔法使い




















からり。

相澤先生は部屋の扉を開けて、中に入っていく。
ふと上を見上げれば、そこには「生徒指導室」と記されていた。
まだ怒るつもりなのだろうか。4時間も説教すれば十分じゃないのか。
いやそういう問題でもないんだけども。
とにかくここに突っ立っても仕方ないので部屋に入る。
中には大きな机とパイプ椅子が2脚。
棚には書類などが並べられており、至ってシンプルな造りだ。
相澤先生が椅子に座ったので、私も同じように向かいの椅子に座った。



「柳崎、あれからどうだ」

「どうもなにも……まさか曜日替わりで先生方が泊まりに来るのはびっくりです」




そう。
あの事件以来、こうして登校するまでに雄英のプロヒーロー達が日を変えて我が家を訪れてきたのだ。
それも一人のみではなく、複数人で急に押しかけてきた。
何も用意してないと言えば、先生方は各々お泊りセットを準備しているではないか。
その事態に私は追い返すわけにもいかず、一週間日替わりで先生たちと夜を過ごした。
勿論マイク先生やオールマイトが来るときもあったが、その時は必ず女性ヒーロー、ミッドナイトやリカバリーガールが必ず付き添いでいた。
料理に至っては手料理を振舞ってくれる先生もいれば、高級料亭に連れていってくれる先生もいたし…。

勿論、目の前にいる相澤先生も例外ではない。
週の最期、つまりは昨日なのだが。
相澤先生は家にやってきた。
しかも、一人で。



丁度同伴予定だったミッドナイトが急に仕事が入ったそうで、宿泊は無しになったようだが夕飯まで相澤先生が付き合ってくれた。




「ゼリーしか食べてるとこ見たことないので、料理できないと思ってました」

「…人並みに料理は出来る」

「カレー、おいしかったですよ!」




へらっと笑って見せる。
カレーは失敗しない料理だし、作りやすいのだ。
それでも悲しいかな、私はカレーを作れないのだ。摩訶不思議。
まさか相澤先生が手料理振舞ってくれるとは思ってなかったから、素直に嬉しかったし、凄いって思った。




「柳崎、楽しかったか?」

「はい、楽しかったです!」

「料理美味かったか?」

「おいしかったです!」

「急に押しかけて悪かったな」

「私の為ですよね?ありがとうございます!」

「何か心配事は無いか?」

「ありません!」

「元気か?」

「超元気です!」

「俺に出来ることはあるか?」

「大丈夫です!!」

「柳崎、お前最近笑ってるか?」

「はいっ!笑ってますよ?ほら、ニコー!!」










「柳崎」

「はいっ」

「嘘つくな」

「…」

「…そりゃ、怖いよな」

「………」





相澤先生の、核心を突く言葉に私は口端を下げた。
下唇を強く噛みしめて、ぎゅっとスカートの端を握りしめた。





「…夢に」

「ああ」

「夢に…出てくるんです……炎に包まれて、雪村さんが……」

「…」

「怖くて、怖くてっ…終わったのに…終わったって何度も自分に言い聞かせてるのに…」

「…無理して笑うな」

「…すみません」

「怖いなら怖いって言え」

「…はい」

「平気なフリするな。あんなのを体験して平気な奴がどこにいるってんだ」

「…」

「柳崎」

「はい」

「今からお前が今までの出来事、どうでもよくなるくらいの、とびっきりの話をしてやる」

「…?」





相澤先生は、意味深に笑うと、私の目の前に一枚の紙を差し出した。



そこには。


















「ヒーロー科、編入のご案内…?」














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