ダイビング!

□vol.12
1ページ/3ページ








「―――100%」




そう呟いた柳崎の言葉に、俺は思わず身構えてしまった。
また、あの時の様になるのではないかと。
咄嗟に個性を抹消しようとしてしまった。

それでは柳崎自身が成長しないと言うのに。




俺は情けない話、あいつが暴走した時の殺意に、未だに気圧されたままだったかもしれない。













vol.12 100パーセント
















尾白が俺に補習の申し出をした時は、断ろうかと思っていた。
あの事件の後に、生徒同士でやらせるのにはいささか安心できない。
だが俺はそれでも尾白に許可をくれてやった。
俺ばかりと戦っていたら柳崎自身も何も成長しねぇ。
たまには違う相手もいいかもしれない。そう思った。
最悪俺が個性を抹消すればいい。
あいつが自分から逃げたまんまなら、全力は早々出さないだろうと思っていたのに。




「絶好調だよッッ!!!相澤先生!!!!」




開いた口がふさがらなかった。
勝手にあいつら同士で火ぃつけあって、勝手に燃え上がってやがる。
柳崎がまさか尾白相手に100%を出すと思っていなかった。
どうせ今回も怖さに負けるのだろうと思っていたのに。


あいつは違った。



全身を竜にした時、一瞬こちらを振り返ったがあいつは確かな目で俺を捕らえていた。
暴走していた時とは違う。殺意が全く感じられない。


心境の変化か?


あの事件の後あいつはぐずぐずと落ち込んでいたんじゃ、無かったのか?




理由はどうあれ、今はその"万が一"の状況に近い形だ。
俺は捕縛武器に手をかけ、その様子を見守った。



「…」




―――コントロール出来ている?



楽しそうに戦うあいつを見て、眉間に皺を寄せた。
短期間で、こうも早く成長したと言うのか?
一瞬柳崎が尾白を攻撃した時に加減する場面が見られた。
あれは、確かに。

制御している。

手探りの状態で尾白と戦っているが、何より本人自身の戦い方が壊れ物を扱うように戦っている。
まだ自分の全力を知らない柳崎だからこその行為だ。



かと思えば急に個性が解かれ、空中に浮いていた二人は重力に従って落下する。
咄嗟に俺は二人を捕まえた。




俺は急に全力で力を解放した柳崎を叱った。
だが半分本音が漏れる。



柳崎はそんな事さえも気にせずに、笑っていた。




「100%!!コントロール出来てました!!私、意識飛ばさなかったです!」




笑っていたかと思えば、次は泣いている。
全く、忙しない奴だと溜息さえも零れた。



だが、こいつにも見込みがあったってことだ。




"相澤先生のような、ヒーローになる"




あの言葉を聞いたときは心底驚いたけど。
こいつは本気だった。
今までめんどくせぇモン背負ってた割には、思いのほか自分で割り切れることが出来ている。
十分ヒーローになれる素質を持っているじゃねぇか。



こいつが嬉しそうに笑うから、思わず目を逸らしてしまった。
だから、その後の行動は俺にとっては不本意だった。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ