ダイビング!

□vol.11
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「もうすぐテストだな」

「…心操君私の前でその話はしないほうがいいぞ」

「由紀…お前…」

「そんな哀れな目で見ないで!!!!」













vol.11 ダブルテイル














「私は馬鹿じゃない」

「お前中間で下位だったよな」

「私は馬鹿だった…?」




昼休み。
私は頭を抱えながら昼食に向かっていた。
今日は購買で何か買おうかと思い、財布を持ってきた。




「教えてやるから」

「おお神よ…哀れな子羊にに魂の救済を…」

「先に席取ってるから購買行って来いよ」

「らじゃっ!!」




びしっと敬礼をして、私は購買へ向かった。
今日はパンの気分だから〜何にしようかなぁ…
棚にはいろんな種類のパンが並んでいる。
特に人気なのはふわふわメロンパン。外はカリッと中はふわっとで、深い味わいが生徒に大人気。
…よし、メロンパンにしよう。

人ごみをかき分けて棚に手を伸ばそうとすれば、丁度ラスト一個。
ちょっと得した気分でパンを手にした時だった。




「「あっ」」



他の人と手が重なってしまい、思わずその手をひっこめた。
誰かと思って隣を見やれば。




「尻尾君…!」

「あ、竜の人…」




体育祭で心操君に洗脳された子だった。
名前が分からないので、尻尾君とかってに呼んでいた。
まぁ私にも尻尾は生えているのだが。




「あ、私いいよ!焼きそばパンにするから!!」

「いや、女子に譲ってもらうのも…」

「いやいや、私もそこまで食べたいわけじゃないし」

「いやいやいいって!」




お互いが引かない状態。
そのままでは拮抗してしまうと思ったので、尻尾君に「ちょっと待ってて」と告げた。
私はさっとメロンパンを取って、レジへ向かう。
お会計を済ませて、自分の分と袋を小分けにしてもらった。
それから律儀にメロンパンの棚の前で待ってる尻尾君に、私は袋を差し出した。




「どうぞ!」

「えっ!?いや、だって君会計して…!?」

「この間の体育祭のお詫びも兼ねて。だから、受け取ってください」

「…あ、ありがとう」

「それじゃあ!」




と、私は心操君の待っている席に向かおうとした時、尻尾君に腕を取られた。




「名前、教えてよ!今度俺からも何か驕るからさ」

「柳崎由紀、尻尾君は?」

「俺は尾白猿夫」

「尾白君だね、よろしくね」




猿君は手を離してくれたので、私は彼にばいばい、と手を振ってその場を去った。
心操君はどこかなぁとキョロキョロ見渡せば、重力に逆らってるヘアスタイルを見つけた。
心操君だ。



「お待たせー」

「何買ってきたの?」

「焼きそばパンとアイス!」

「……お前朝から今日こそはメロンパン食うって言ってたじゃねぇか。
また買いそびれたのか?」

「ちょっとねー。やっぱ人気だよーメロンパン」

「あっそ」

「また今度買うよ」




椅子を引いて、心操君の隣に座った。




「今日も補習か?」

「うん。一時間くらい先生に付き合ってもらう。もうすぐテストだし、補習時間もちょっとずつ減らしていくって」

「勉強できる時間あるか?」

「こっちの補習授業でテストが疎かになっても元子もないしね。
私も空き時間見て勉強するよ」

「そうだな。お前、赤点だけは取るなよ」

「私は満点を目指しているわけじゃない。赤点を取らないように努力するんだ」

「でも由紀、この間の小テスト満点だったよな。
お前やる気ねぇだけで本当は頭いいんじゃないのか?」

「まさかまさか。あれは偶然の結果なのだよ心操君。私ホラ脳筋だからさー」




頭で考えるよりも、身体が先に動くって感じかな。
個性の特性上身体能力には自信あるし。
私は焼きそばパンの袋を開けて、一口齧った。



「心操君、あのね」

「なんだ?」

「心操君に謝らなきゃいけないことがあるの」




この間の事件で、この個性がどんなものか心操君には十分伝わっただろう。
だから、いつまでも隠し事をしておくわけにもいかないし、私自身もずっと隠しているのは嫌だった。




「入学試験の事」

「…」

「本当はギミックにやられて負けたのって嘘だったんだ」

「…」

「ギミックに襲われそうになったのは本当。でも私は逃げずに個性を暴走させちゃった」

「…」

「本当は暴走させなくても良かったんだけど、巻き込まれた生徒がいて、それ助けようとしたら…頭が真っ白になっちゃって」

「…知ってるよ」

「え?」




心操君の意外な言葉に、私は自分の耳を疑った。




「お前の傍にいればいくらなんでもギミックにやられるとは考えられねぇ。俺に変な気を遣うな」

「…ごめんね」

「つーか、お前その性格で俺に隠し通せると思ったのかよ」

「め、めんぼくねぇ」

「既にバレバレ」

「あいたっ」



心操君にデコピンされた。
地味に痛い。




「…俺もこの間まではお前がうらやましいとかいろんな感情持ってたけど、全部どうでもよくなった」

「…」

「だっていつまで悩んでたって、俺は俺だし、お前はお前だろ?
それぞれの個性を生かした方法がある。お前だって苦労してるのは、十分わかったしな」




心操君は私の腕を見て、呟いた。




「…そうだね」

「そんなことよりお前はテストの心配しろよな」

「うっ!」

「赤点取ったらアイス禁止な」

「そんな!あんまりだァ!!!」







結局、私の心配も杞憂に終わり、心操君と私は笑いながらお昼休みを過ごした。






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