泡沫の夢
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「放って置いてって言われても…なぁ?」
切島君はしゃがんで机に頬杖をつきながら、下から私を見上げた。
ニコッと太陽みたいなその笑顔に思わずどきっとしてしまう。
「大神、お前本当は嬉しいんだろ?」
「なっ…!?」
「だって尻尾、すっげぇ振ってるし」
「え」
一気に顔面が真っ赤になるのが、自分自身でもよく分かった。
咄嗟に大きな尻尾を自分で抱え込んで、その動きを止めようと試みるが。
「ち、違うから…!!別に嬉しくなんかないし…!!!」
言葉とは裏腹に、尻尾をぎゅっと握りしめているのに左右にブンブンと揺れ動く。
「わ、私別にみんなと仲良くしたいなんて思ってないから!」
ブンブンブン!!
「そ、それに皆だって変だよ!私嫌な態度取ってるのに話しかけてくるとかお人よしじゃないですか!!」
ブンブンブン!!!
「ほ、本当は私だってみんなと仲良くしたいだなんてこれっぽっちも思っていませんからね!!!」
ブンブンブンブン!!!
「あ、蛙吹さんにだって初日に嫌な事させちゃったことずっと後悔してたとかそんなわけありません!!!
わ、私は一匹狼主義者ですけどクラスの皆とは仲良くしたいとか微塵にも思っていませんからーー!!」
「全部本音ダダ漏れだろうが、大神」
さっさと席につけ、と。いつの間にか教室に入ってきた相澤先生は淡々と告げた。
切島君達はニヤ〜っと意味ありげな笑みを零して自分の席に戻って行く。
「…お前って意外といい奴なんだな、大神」
「轟君まで……ッッ!!」
焦って馬鹿なことをしてしまった自分を全力で殴り飛ばしたい。
そんな気分だった。
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