泡沫の夢

□04
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学校のチャイムが鳴り響き、午前授業の終了の合図を生徒に知らせた。
お腹も丁度空いてきた頃。
今日は食堂でどんなメニューにしようかなーなんて考えながら席を立つ。




「…大神さんて、このクラス?」

「ああ。あいつだろ?」




耳が声のした方に揺れ動く。
誰かが私を訪ねてこの教室に訪れたのかと思い、目線をそちらに向ければ。




「!」




訪問者とバチッと目が合った。
それから片手を上げて、こっちに来いと言わんばかりに手招いた。

突然の訪問者は―――








「(心操君だ…)」



















04 話をしましょう



























―――どういう経緯があってか。
私は昼食を心操君と向かい合って食べていた。
昨日の今日で、なんとも微妙な感じではあったけど、私も心操君には用事があったし。


お互いぽつりぽつりと会話を紡ぎながらここまで来たのだが、一向に話題性がつかめない。
フェンリルの時にはポンポン話が出てくるし、心操君もそれに乗ってきた。
しかし今はフェンリルということを隠さなきゃいけないし、何よりついついフェンリルの時のままで会話をしてしまいそうだから、会話をすることを躊躇ってしまう。

口が滑って「昨日は大変だったね!」なんて言ってしまえばもう終わりだ。



せっかくの苦労も水の泡。



だからといって尻尾巻いてビクビクしてるわけにもいかない。
心操君がお昼一緒にした理由を聞かなきゃ。


私は意を決して、口を開いた。





「私に何か用事でもあったんじゃないの?」

「…」




心操君は私に目線を向けると、すぐに下に戻す。
それからポケットから何かを取り出した。



それは淡い桜模様の袋に梱包された、小さな包み。





「この間、ありがとう。ちゃんと洗ったから」

「…わざわざこんなことしなくても、いいのに」




あの時心操君に手渡したハンカチだった。




「大神さんて変わってるよな。ヒーロー科のクセして、ぜんぜんらしくねぇっつーか」

「?」




私は心操君から渡された袋を受け取る。
心操君は机に頬杖をつきながら、続けた。




「一歩引いてる様に見える。クラスに馴染んでねぇ」

「…そ。」

「いや感想それだけかよ…お前もしかして友達もまともにいないんじゃないのか…?」

「そんなの…勝手でしょ」

「…お前って、変な奴だな」





…。


なんというか、フェンリル時では私の事を年上だと思ってるのか、対応は丁寧な方だと思うんだけど。
こうして直に離せば意外と踏み込んでくるタイプだなぁ、と。思った。
でもそれが、本当の心操君かもしれない。




「ところで君は…どこの科なの?」

「……普通科だよ」




そう言った口調はどこか怒気を含んでいて。
あ、これはマズったのかななんて冷静に分析した。
だから当たり障りないように、探る。





「私は嫌い?」

「さぁ?」

「ヒーロー科は好き?」

「…さぁね」




淡々と答える心操君だった。
これじゃあ全く分からないよ!なんて思うかもしれないけれど、それなりに心のセラピストとしてやってきている。
短い受け答えの中にも答えはちゃんと隠れてるのだ。
それを本人が出すかは別として、ね。


心操君の先ほどの受け答えとしては、
私のことはよく分からないけど、ヒーロー科にはちょっとした訳がある、って感じかな。

だから私は続けて心操君に質問した。


持っていた箸をくるりと回して、心操君へ向ける。




「君の個性ってなに?」













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